2024年4月25日(木)

ビジネスと法律と経済成長と

2022年5月30日

 東京地裁は今回の判決で、時短営業の要請に応じなかったグローバル社に対して都が時短営業の「命令」を出したことについて、違法性があると判断した。

 特措法の「命令」は、単に飲食店が「要請」に応じなかったというだけでは出すことができない。「命令」を出すには、①要請に応じないことに正当な理由があることに加え、②感染拡大防止等のため特に必要があると認められることが必要だ。

合理的な説明はなされていない

 このうち①「正当な理由」について、グローバル社は、要請に応じた場合の補償の仕組みが著しく不十分であり、漫然と要請に応じた場合に経営に支障がきたされるので、要請に応じないことに正当な理由があると主張していた。

 しかし判決は、特措法上、事業者に対する支援が予定されており、対象期間も一時的であることなどからすると、経営状況等は「正当な理由」にはならないと判断した。飲食店ごとの経営状況を考慮すると、要請の目的の達成に支障を来すというものだ。

 他方で判決は、都による命令に②「特に必要があると認められること」を否定し、都の対応に違法があると判断した。グローバル社が換気の強化や消毒、検温などの感染防止対策を行っていたことを前提に、緊急事態宣言の解除まで残り4日という中であえて命令を出すことについて合理的な説明がないというものである。

 なお、判決は、都の対応に違法があったとしながらも、損害賠償責任は認めなかった。特措法に基づく命令が出されたのは今回が初めてのことであり、前例がないため、適切な判断できなかったというのがその理由だ。

 新型コロナの感染拡大はこれまで社会が直面したことのない問題であり、国や自治体には難しいかじ取りを求められた。特措法に基づく「命令」の制度も新型コロナの問題が起きてから行われた法改正によるもので、都にも試行錯誤があったことは否めない。

 とはいえ、緊急事態宣言の解除まで残り4日の時点で、敢えて命令に踏み切った都の姿勢は、見せしめ的な目的があると受け止められても仕方がないだろう。

 判決は、都が狙い撃ちや見せしめの目的で命令を出したとまでは認めがたいとするものの、命令に必要性がないと判断する理由の一つに、営業時短の要請に従っていない店舗が2000店舗以上ある中で、グローバル社の店舗を含む6店舗に対してしか命令が出されていないことは不公平であることを挙げている。


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