経営状況を考慮しないでよいのか
判決は、経営状況等は原則として要請に応じないことの正当な理由にならないと判断した。飲食店にとって時短営業による売上減は死活問題だ。自主的な協力を建前とする「要請」に応じるうえで、経営状況の問題が正当な理由にならないというのは、一抹の疑問が残る。
この点について、特措法の改正に際して見解を表明した内閣官房は、経営状況等は「正当な理由」にならないとしたうえで、正当な理由がある例として「地域の飲食店が休業等した場合、近隣に食料品店が立地していないなど他に代替手段もなく、地域の住民が生活を維持していくことが困難となる場合」を挙げる。しかし、地域の食生活の問題は行政が解決すべき課題であり、個々の飲食店が自主的な判断で解決する問題ではないだろう。
感染症の拡大という社会全体の問題に対処するため、一部の業界に不利益を求めるのであれば、そのコストは公的資金による支援金などの形で、社会全体で負担するのが本来の姿のはずだ。
いずれにせよ、場当たり的な対応は、経済活動を疲弊させた挙句、感染拡大防止も不十分な結果に終わったということになりかねない。
今回の判決は、残り4日のみの営業時短命令という場当たり的とも思える措置に対して警鐘を促した格好になるが、飲食店に不利益を求める以上、明確な方針に基づく措置が必要だろう。そうしなければ、〝新常態〟という中での起業の新たな挑戦の芽も摘みかねない。