2024年12月9日(月)

都市vs地方 

2022年9月27日

 さる9月20に国土交通省から2022年「都道府県地価調査」が発表された。これは、毎年7月1日時点での、土地の価格を都道府県が調査するもので、1月1日時点の価格を調査する「地価公示」とペアをなし、土地取引時の参考価格としての役割や市町村税として課される「固定資産税」の評価の参考基準として用いられるものである。

(Loco3/gettyimages)

 ちなみに、土地の価格については、このほか相続税の課税の際の基準として用いられる「路線価」がある。これらの土地に関する価格は同じ地域であっても同じとは限らない。

 地価高騰が起こったバブル時代には、住宅地に対する課税の重みを緩和する配慮から、固定資産税の評価額が公示地価よりもやや低めになっており、死亡時に一時に課税される相続税の負担も考慮して、路線価も低めに評価された。また地価高騰をあおらないようにという配慮から公示地価自身も実勢の取引価格よりやや抑制気味に評価されていた時期がある。

 この結果として、1つの土地に実勢価格、公示地価・都道府県地価調査、固定資産税評価額、路線価という4つの価格が存在することになり、「一物一価」ならぬ「一物四価」という現象が発生している。

 さて、今回の都道府県地価調査におけるトピックとしては、全国の住宅地の地価の平均価格が3年ぶりに上昇し、昨年よりも+0.1%、同じく全国の商業地の地価の平均価格も3年ぶりに+0.5%と上昇したことがあげられる。

 この地価上昇理由としては、第1にはコロナ禍で長らく低迷した経済が、入国制限の緩和などによる訪日外国人観光客の回復などを通じて、徐々に底を打ち始めたとみなされることがあげられる。実際、都道府県地価調査公表前の9月8日に発表された今年4~6月期の国内総生産(GDP)成長率は、名目で年率2.5%、実質で年率3.5%と経済の安定的回復を期待させるものであった。

 第2の理由としては日本銀行による金融緩和策の継続で、住宅ローンなどの資金が借り入れ易く、在宅(リモート)勤務の広がりとともに、個人の住宅に対する需要が増加しつつあるためと考えられる。

47都道府県の用途別地価ランキング

 地価が+0.1%~+0.3%上昇に転じたといっても、全国平均での話であり、地域別の地価は当然異なる。表1は、全都道府県の商業地・住宅地の1平方メートル当たりの平均価格を順位別に示したものである。

 表1の結果を見ると商業地、住宅地ともに東京都が第1位で、それに続く都道府県もおおむね大都市を含む都道府県が並んでいる。しかし、順位をより細かく見ていくと、商業地の順位付けと住宅地の順位付けが100%同じではなく、両者の乖離があるケースがあるに気づく。

(出所)国土交通省 2022年「都道府県地価調査」2.都道府県別・用途別平均価格より作成 (注)金額単位:円/平米。 写真を拡大

 たとえば、商業地では第3位に位置した京都府は、住宅地ではややランクを下げて第5位である。これと対照的に滋賀県は商業地のランクでは第20位であるが、住宅地では第14位と6位のランクアップを見せている。栃木県や茨城県は、商業地ではそれぞれ第30位、第31位であるが、住宅地ではそれぞれ第19位、第20位と11位のランクアップになっている。逆に長崎県は商業地では第17位であったのに対し、住宅地では第37位と20位の差が存在している。このうち、滋賀県、栃木県、茨城県はその場所の商業地でビジネスを行うよりも、その県の住宅地に居住して、他府県に通勤するという方が便利であるという生活圏の実態を表しているといえる。


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