2022年12月9日(金)

WEDGE REPORT

2022年10月29日

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堀川晃菜 ( ほりかわ・あきな)

サイエンスライター・科学コミュニケーター

新潟県出身。長岡高専への進学を機に理系の道へ。東京工業大学生命理工学部に編入学。同大学大学院生命理工学研究科修了。農薬・種苗メーカーでの勤務を経て、日本科学未来館の科学コミュニケーター。その後、WEBメディアの記者・編集者を務め、現在はフリーランス。著書に『化学技術者・研究者になるには』(ぺりかん社)、『みんなはどう思う? 感染症』(くもん社)。

 オランダで製作された映画「Well Fed」(日英字幕つきで無料公開)は遺伝子組み換え(GM)作物をめぐるドキュメンタリーだ。タイトルには〝飽食〟の裏に潜む途上国の実態を伝えようとする意図が込められている。

映画「Well Fed」のワンシーン。途上国の現場にも足を運び、GMと食料問題に迫っている

 2022年9月14日に東京で開催された上映会には、制作者である監督のKarsten de Vreugd(以下、カーステン氏)と科学ジャーナリストのHidde Boersma(以下、ヒッデ氏)が来日。上映後のパネルディスカッションでは、日本の生産者、農業技術の研究者、食品流通業者や理科教員など、さまざまな立場の人が意見を交わした。さらに翌日、カーステン氏、ヒッデ氏の両氏に単独インタビューを行った。

 前編に続き、本記事ではGM作物をめぐるコミュニケーション課題について両氏の見解をもとに考えていく。

抱かれ続ける農業への「ロマン」

 上映会のパネルディスカッションでは「オランダの市民はGMをどのように受け止めているのか、メディアは中立性を保っているか」という質問があった。これに対する彼らの見解は興味深いものだった。

上映会のパネルディスカッション

 ヒッデ氏:「都市部の人ほど、オーガニックを好む傾向にあり、GM作物に関して懸念を示しています(監督のカーステン氏も当初はGMに懐疑的だった)。そうした人たちがニュースなどのコンテンツを制作しているので当然、情報は偏ってしまいます」

 カーステン氏:「オランダを含め、EUのマスコミがそれほど偏見を持っているとは思いませんが、大衆に迎合している点は否めません。でもそれは、商業メディアのジレンマであり、情報を伝える必要性だけで、ジャーナリズムは成り立たないと思います」

 ヒッデ氏:「たしかに、ジャーナリストは真実を伝えたいと思っているし、意図的に事実を歪めようとはしていないでしょう。ただ、古い農業を美化した物語には、ロマンが感じられて、好まれるのでしょうね」

 この「古い農業へのロマン」について、上映会の翌日、改めてインタビューで尋ねてみた。もし彼らが言うように、農業に対しロマンを求めるのだとしたら、それはなぜなのか。

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