「ホーム・エナジー・レポート」日本版では、
近隣世帯とのエネルギー使用量を比較することで
自発的な省エネ行動を促した
佐々木先生:その他に工夫はありますか?
池本さん:レポートを見た人が不快な気持ちにならないように、キャラクターの活用など、表現を工夫しました。
使用量の多い人はその分省エネ余力のある人でもありますが、レポートを見ると、自分が他の人よりもエネルギーを多く使い、料金を多く支払っているという事実に直面することになります。その人たちがネガティブな気持ちを持つことなく、前向きに省エネに取り組もうと思えるようなデザインを目指しました。
佐々木先生:その観点は、社会実装を進めていくときにも重要ですね。今回の実証事業では紙で郵送されましたが、社会実装の段階では、レポート内容をWEBのマイページに掲載するなど、紙の郵送でない方法で展開される場合もあります。対象者が自然と見たいと思えるようなデザインや表現を意識することが大切です。
ホーム・エナジー・レポートは、全体的な使用量の削減を目指す施策だと思います。一方で、今年の冬は危機的な電力不足に陥ると言われているので、電力需要の高まる時間帯であるピークタイム(冬季は17~20時頃)に集中的に節電してもらうための取り組みも必要になります。
池本さん:環境省の実証事業では、ナッジと並行して、ピークタイムの節電成果に金銭ポイントを提供して節電を促す「リベート・プログラム」の効果検証も行ってきました。京都大学の依田高典先生の研究チームが担当され、佐々木先生にも参加いただきました。
この事業からは、金銭ポイントを受け取ることで節電成果を上げられる人とそうでない人がいることが分かりました。また、結果として、ピークタイムだけでなく、その他の時間帯の節電も促進されることが分かりました。
電力危機への対応だけでなく、脱炭素も同時に目指している環境省の見地からも、重要な発見だと思っています。
佐々木先生:18年から4年間かけて取り組んできました。政府は、今年の電力不足対策として、節電ポイントを導入したので、期せずして時勢に沿った研究になったと驚いています。効果的なプログラムの設計に、こうしたエビデンスが生かされることを期待しています。
「ナッジ・ユニット」
ナッジの適切な政策活用を支援する組織。主に公的機関内に立ち上げられ、各機関の職員とともに、大学研究者などの外部アドバイザーで構成されている。
日本では現在、地方自治体でナッジ・ユニットが立ち上がる動きが活発にみられ、つくば市・横浜市・尼崎市や北海道・宮城県・岡山県などで組織されている。
平成の時代から続く慢性的な不況に追い打ちをかけたコロナ禍……。 国民全体が「我慢」を強いられ、やり場のない「不安」を抱えてきた。 そうした日々から解放され、感動をもたらす不思議な力が、スポーツにはある。 中でもサッカー界にとって今年は節目の年だ。 30年の歴史を紡いだJリーグ、日本中を熱気に包んだ20年前のW杯日韓大会、 そしていよいよ、カタールで国の威信をかけた戦いが始まる。 ボール一つで、世界のどこでも、誰とでも──。 サッカーを通じて、日本に漂う閉塞感を打開するヒントを探る。