10年後、憧れの職業に
そんな状況に危機感を持った、祥さんたち茨城県内の「農業女子」たち3人が、立ち上げたのが「AGRI BATON PROJECT(アグリバトンプロジェクト)」だ。「10年後、農業が憧れの職業」だと言ってもらえるように、農業の楽しさを子どもたちに知ってもらうために絵本をつくろう、ということになった。
絵本に加えて、横田農場のおコメ、田んぼでの農業体験などを返礼品にする形で、クラウドファンディングを開始した。2020年7月のことだ。たった2カ月の間で200万円が集まり、絵本づくりの資金となった。そして、2021年11月、『あさごはんのたね』は完成した。
「私も、農家ではない家から嫁いできました。実際に農業を知ってみると、農家の人からすると「当たり前」のことでも、「なんて面白いんだ!」と思えました。だから、これまでの地域の子どもたちを呼んで農業体験をしてもらう取り組みをしてきました。今回も、絵本にすることで、より簡単に農業の世界にちょっとだけ触れることができる機会を提供できればという思いでした」
絵本の構成については、祥さんたちが農家の方々にインタビューをして「農業の魅力」について語ってもらったそうだ。そうした中で、「農業の1年(四季)と、風景が感じられる内容にする」という骨格が決まっていった。
絵本出版後は、全国から絵本読み聞かせ活動のアンバサダーを募集し、23都府県81人まで広がっており、それぞれの地域で、子どもたちへの「読み聞かせ」などを行っている。
「農家に嫁いで、夫の手伝いという立場だった女性たちが、より主体的に、自分たちの仕事として誇りが持てるようになっています。絵本を通じて農家だからこそできる、食育を広げていきたいです」
実は、第2弾のプロジェクトも進んでいる。今度のテーマは「牛飼いさん」だ。畜産農家が、どのように牛を育てているのか? そして出荷するときの気持ちなど、「いのちをいただくこと」を考えるという、大人でも普段考えることの少ないテーマだ。今回もクラウドファンディングで180万円ほどの資金が集まっており、今年末の刊行に向けて、制作中だ。第2弾も必ず読んでみたいと思う。
アグリバトンプロジェクトは、農水省が主催する「農業女子アワード2022」の「ベストグループ賞のファイナリストにも、ノミネートされている。発表は2月14日。ぜひとも、注目していただきたい。https://myfarm.co.jp/women/nougyoujoshi_award2022/finalist.html