元EU委員長:ジョゼ・マヌエル・バローズ
「EUの第2次世界大戦後最も重要な政治的目標は『経済的な統合を通じた平和』でした。グローバリゼーションは経済や社会を発展させる大きな原動力だったのです。わたしはこの亀裂は元に戻らないと考えています。大きなリスクは大規模な戦争です。そのような事態にならないことを祈っています」
元米財務長官:ローレンス・サマーズ
「現在高まっている地政学的な緊張、米国と中国の緊張などを考えますと、ますます分断が進み、世界が以前ほどフラットではなくなる可能性は避けられないでしょう。経済的な対立が安全保障の対立につながり、安全保障の対立が経済的な対立につながる『悪循環』に陥る可能性があります」
すでに荒れる世界情勢の中で
わたしたち日本人は戦後、初等中等教育において、第2次世界大戦後に二度と世界大戦が起きない仕組みとして、国際連合と経済的には関税及び貿易に関する一般協定(GATT)が設立された、と学んできた。後者は世界貿易機関(WTO)に発展した。この仕組みのなかで“貿易立国”の利益を享受してきたとも学んできた。
米国は、中国に対抗するために、インド太平洋経済枠組み(IPEF)を築きつつある。参加国は、インド、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、日本、韓国、ベトナム、フィリピン、ブルネイ、フィジー、豪州、ニュージーランドと、中国を封じ込める。
ウクライナに対するロシアの侵攻に対して、北大西洋条約機構(NATO)を中心とする各国はウクライナに向けて武器の貸与などの措置に出ている。
米国のドワイト・D・アイゼンハワー元大統領が、退任の演説において「軍産複合体制」に警告をした。つまり、戦争を望む軍と産業によって、米国が蝕まれているとした。この「軍産複合体制」のカゲがウクライナ戦争にもみえるのではないか。
「第3次世界大戦はすでに始まっている」――フランスの人口統計学者にして、歴史学者・人類学者のエマニュエル・トッドはいう。
“貿易立国”日本の行く手に広がる世界の大海原はすでに、荒れ模様である。