2024年2月29日(木)

Wedge REPORT

2023年3月11日

 実証事業について、立地自治体である大熊町と双葉町も「正確な事実を知り、県外最終処分に向けて具体的なことを進めてほしい」との政府要望を重ねてきた。そもそも、今の状況は全て東京電力という発電した電力を首都圏に送り続けたインフラの事故で生じている。中間貯蔵施設の用地には、将来所有者に返還しなければならない借地もある。

 これら一切を無視し、非科学的な「汚染」呼ばわりは、被災地へ一方的に負担を押し付ける行為になってしまうのではないか。「安全なら尚更、福島にそのまま置いておけ」などと正当化できるものでは到底ない。

見送られた事業開始

 ところが2月25日、NHKから、環境省による実証事業が当初予定されていた今年度中のスタートを見送られたことが報じられた。

 NHKによれば、住民説明会で「なぜここが選定されたのか」や「情報が不十分だ」などの疑問や意見が寄せられたこと、さらに所沢市では地元町内会で反対意見が多数を占めたことから市長が難色を示しことが伝えられている。別の報道では、環境省環境調査研修所の西側に位置する同市弥生町の町会(約800世帯)が実証事業への反対を決議したと書かれていた。反対決議には、投票者の85%以上が賛成したという。

 その昔に「ダイオキシン騒動」で風評被害に遭った所沢市で、汚染無きものへの「汚染」扱いが多数となった現実は残念でならない。

 福島の地元紙福島民友は、3月7日付の社説で【震災12年 除染土壌の行方/福島の問題か日本の問題か】と題し、『関東地方は、東京を社名に冠した会社が第1原発でつくった電力の供給を受けてきた。しかし、その原発の事故で生じたごみは、安全と説明されても受け入れられないということだろう。県民として、怒りのような、失望とも言えるような思いが拭えない。(中略)原発事故は国全体の問題という意識が薄れてはいないか。その当事者意識の弱さが、本県に痛みを強いていることを知ってほしい』と訴える。

 一方で、これまで除染土壌について行政からの説明や情報発信が足りなかったことも否めない。NHK報道では、「まず地元住民への説明を尽くしたうえで、開始の時期について改めて判断していく」という環境省のコメントと、「福島県の負担を少しでも軽くするためという社会的意義があると思うので、実証事業をここで行う意義や必要性を分かりやすく伝えることが重要ではないか」との専門家の意見が紹介されていた。

 今後、いかに正確な情報と実証事業の意義を迅速に周知していけるかが問われるのだろう。報道などメディアの協力と役割も益々重要になる。

 ところが、メディアは必ずしも協力的とは言い難い。たとえば「東京新聞 汚染土」でニュース検索すると、同新聞が処理土を「汚染土」呼ばわりする報道を繰り返してきた実態も見えてくる。同紙はこれまで、ALPS処理水に対しても誤解や風評を誘発させかねない報道を繰り返してきたが、これらは正確な情報の周知や風評払拭に逆行する非協力的態度と言わざるを得ない。

 同紙の記者は最近も、中間貯蔵施設内の未除染敷地において「雨樋の近くで(周囲でひと際高い数値が出る)」「剥き出しの線量計を使い(機器自体が汚染されて高い数値が出る)」「地面すれすれで放射線量計測(ストーブに近づけ測った数値を「気温」と称するに等しい)」という、今どき誰もやらなくなった測定をツイッターで公開していた。

 時代遅れのパフォーマンスは多くの失笑と共に炎上したものの、もしこれが「汚染された土が全国にばら撒かれる」かのような誤解を広めるための布石だとすれば、笑いごとではない。

   
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