2024年12月6日(金)

World Energy Watch

2023年4月4日

 その意味で、日本が段階的廃止の期限を示さないことは現実的で責任ある態度と言うべきで欧州に非難される筋合いはないと考える。わが国は火力発電の脱炭素に向けたさまざまな取り組み(例えば水素・アンモニア混焼や二酸化炭素の回収・利用・貯留(CCUS))をきちんと進めているからだ。

G7アジア代表として低炭素化推進が求められる日本

 わが国はG7の構成国の中でアジアに位置する唯一の国である。世界の石炭の半分以上を消費している中国を除いても、世界の石炭消費の80%がアジアで消費され、中国を除いた石炭消費量でみてもその56%がアジアの国々による消費である。

 現状は過去に石炭を活用しながら経済発展に成功し、その後石炭への依存も低下させた国々が石炭を悪魔化して、今後の経済成長を目指して石炭を必要としている途上国に圧力をかけている構図である。先進国は割高でもガスを使う余裕があるが、途上国はエネルギーコストを節約し、その分を成長投資に振り向けたいと考えるのは当然である。

 先進国が石炭を排斥し、ガス消費量を増やせばガス価格上昇を招き、途上国の負担はますます大きくなり、経済発展が制約される。これがインドの言わんとするところなのだ。

 欧米の非現実的な理想論に唯々諾々と迎合するのではなく、わが国はアジアの代表として、石炭火力の低炭素化をアジアの国々とともに進めていくことこそ経済成長と両立する現実的に有効な気候変動対策であるとG7では堂々と主張してもらいたい。

 
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