高齢世代の不公平は?
確かに、連合の芳野会長が指摘するように、専業主婦(夫)を対象とする第3号被保険者制度により月額6394円、第2号被保険者が「損」をしているという意味では不公平と言える。芳野会長の批判の核心は、負担と受益の不均衡の問題であると言え、なにも第3号被保険者にとどまらない。
よく知られているように、高齢世代も、過去に負担した以上に給付を得ているのであり、例えば団塊の世代はせいぜい最大で月1万5000円程度の保険料負担しかしていないにもかかわらず、国民年金(基礎年金)は6万6250円(2023年4月分以降)の給付額となっている。消費税による補填を考慮したとしてもなお負担以上に給付を得ている事実は否定できない。
こうした高齢世代の給付と負担の不均衡に目をつぶったまま第3号被保険者の不公平だけ殊更取り出して問題にするのは、現役世代の分断を煽るだけとなるだろう。同じ口で高齢世代の不公平の問題も指摘しなければフェアとは言えない。
また、芳野会長は第3号被保険者の負担を増やす話をするだけで、第3号被保険者が国民年金に加入すれば浮くはずの第2号被保険者の保険料を引き下げるのか、それとも他の支出の財源に回すのか、全く言及がない。単に片働き世帯に対して実質的な「増税」がしたいだけなのだろうか?
適用拡大でお茶を濁す厚労省
このように、第3号被保険者の負担と給付の不均衡問題は、そもそもねずみ講的な年金制度が生み出す巨大な世代間の不公平問題に飛び火するのは明らかである。公的年金制度を所管する厚生労働省はこれまで、パートの厚生年金への適用拡大を図ることで、なし崩し的に第3号被保険者制度の実質的な廃止を目論んできた。実際、第3号被保険者は11年度1169万人から21年度では763万人と10年間で3分の1以上の減少と、減少傾向で推移している。
筆者は、こうした現行の年金制度が生み出す負担と給付の不均衡問題やいわゆる130万円の壁問題の解決策として、1977年にすでに社会保障制度審議会から提案されていた「基本年金」同様、基礎年金の全額税負担化が望ましいと考えるが読者の皆さんはいかがだろうか。