2023年7月4日付の米ニューヨーク・タイムズ紙は「プーチン、習近平、モディ会談では協調への動きなし」とのデイヴィッド・ピアソン同紙中国特派員らの解説記事を掲載し、先の上海協力機構(SCO)オンライン首脳会合では、建前は別として、中印露の三大国の優先事項が異なることがますます明らかになったと指摘している。
米国主導の国際秩序改変を試みる三大国首脳は7月4日にオンラインで会談したが、各首脳は自身の目的に集中していた。プーチンは、ワグネルの乱後の権力維持とウクライナ戦争への国際的支持を誇示し、習近平は米国の覇権主義を攻撃し、主催者モディは、インドの台頭を示し、パキスタンを念頭にテロとの闘いで団結を呼び掛けた。
今回、プーチンほどイメージ変更が必要だった指導者はいない。ワグネル反乱後初の国際会合で、プーチンは各国の支持に感謝し、乱に大衆の支持はなくロシア政治層は一致して対応したと主張した。同時に首脳会合をウクライナ侵攻への国際的支持を示すものと位置づけようとした。
中国はロシアを支援しているが、これは対米対抗上必要なパートナーとしてプーチンに長期的に賭けているからだ。しかし、これには犠牲も伴う。中国は欧州の主要経済パートナーとの関係修復に苦労し、台湾への敵対的立場への国際社会の注目も高まっている。
中国の最大の新興ライバルであるインドは2017年にSCOに加盟し、対西側諸国関係と対中露関係をバランスさせる場と位置付けている。インドは、ウクライナ侵攻への非難を拒んで以降、ロシアと主に経済面で良好な関係を維持しているが、中国との関係は、国境紛争と中国が対中封じ込めの場と見るクアッド(日米豪印)へのインドの参加で悪化した。先月のモディ訪米は、インドが中国台頭抑止のために対米接近しているとの中国の疑念を一層高めた。
それにもかかわらず、インドはSCOへの関心を維持している。インドは中央アジア諸国にエネルギー供給やパキスタンに影響を与えるアフガニスタンへの影響力維持で依存している。モディはSCOを称賛したが、同時にパキスタンを念頭に、テロを使う国々を非難すべきと主張した。
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上記は、SCOの現状を分かり易く説明した解説記事である。
SCOは2001年に中露と中央アジア諸国4カ国(ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン)の6カ国で発足した地域的会合である。元々は、ソ連崩壊後独立した中央アジア諸国との関係安定化を目指す中国と、同諸国への影響力維持と中国との経済関係強化を目論むロシアの思惑の一致でできた組織だ。
その後2005年には、インド、パキスタン、イランがオブザーバー参加し、2015年にはインド、パキスタンが正式加盟することで当初の目的とは変貌し、「現状維持」(status quo)と距離を置く中東・南/東南/中央アジアの国々の地域的会合に変わっていった。その後もオブザーバーや対話パートナーとしての参加申請は続出し、今や、オブザーバー国は(北朝鮮も含む)6カ国、対話パートナー国は9カ国になった。そんな中、今次会合ではイランの正式加盟が承認され、加盟国は9カ国になった。