2024年11月23日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年7月25日

 このようなSCOの位置付けを端的に言えば、「烏合の衆」だろう。北京に事務局もあり組織体制はそれなりにあるのだが、各国の思惑があまりに違い過ぎる。年1回の首脳会合は開催できてもスピーチ合戦に終わり、実質的協力は進まず、意味のあるイニシアティブも打ち出せない。過度に警戒する必要はないと言えよう。

ロシアは制裁への対抗策を見出そうとするが

 より面白いのは中、印、露の思惑の違いである。プーチン大統領にとっては、ワグネルの乱後の初めての国際会議への出席であり、自らの健在とウクライナ戦争への支持を誇示する場と位置付けたのは想像に難くない。海外報道によれば、同大統領は、西側の制裁を念頭に、SCO加盟国間の貿易促進のために新たな銀行・通貨メカニズムを創設する必要性を指摘した由であるが、今後具体的動きが出てくる可能性は高いとは思われない。報道される中国の発言には、ほとんど目新しい点はない。

 SCO加盟後首脳会談の初の主催国となったインドにとっては、国境問題のみならず今後の大国間競争という意味でも、中国が最も深刻な安全保障上の挑戦になっており、それを踏まえて実質的な対米接近を強めている。これがSCOの限界の根本的要因の一つだろう。また、モディ首相は、同じく加盟国であるパキスタンを念頭に置いた「テロ国家への共同対処」を主張したが、これは、加盟国9カ国の間の立場の差のもう一つの要素だ。

 なお、イラン新規加盟との関係では、モディ首相はインドのイラン・チャバハール港への投資に言及し、南北輸送回廊は中央アジアの内陸国がインド洋にアクセスする重要なルートだと指摘したようだ。この記事が指摘するように、SCOのインドにとっての大きな意味の一つは、エネルギー供給やパキスタンとの関係を念頭に置いたアフガニスタンへの影響維持のための中央アジア諸国との接点確保である。常に自らの国益に応じて対応するインドの面目躍如だと思う。

 次の注目は、8月22日~24日にヨハネスブルグで開催される予定のBRICS首脳会合だ。今回インドはSCOをオンライン会合とすることで、プーチン大統領がICCから訴追されていることの影響を避けたが、それも含めて、南アフリカがどのような対応を取るのか。SCOに比べてより発信力が強いBRICSの動向には一定程度注意する必要があると思う。

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