あるテクノロジーの出現で、周囲の話題は持ち切りである。「ChatGPT」の登場だ。同サービスはいわゆる、「対話型AI」と呼ばれるものの一種であり、簡単にいうと「何かしら言葉を投げかけると、気の利いたコメントを返してくれる」というものだ。その一例を見てみよう。
Q.雑誌「Wedge」の特徴を教えて下さい。
A.「Wedge」は、JR東海グループの一環として発行されていますが、単なる社内報としてではなく、社外にも発行されている点が特徴的です。ビジネスパーソンや経営者、学生などに向けた情報提供が行われており、JR東海グループのビジネス戦略やその裏側にある思考プロセスを知ることができる貴重なメディアとなっています。
これはごくごく、氷山の一角にすぎず、プロフィール文章の作成や、人事に関するアドバイス、プログラミング言語の生成などなど、活用できるシーンは枚挙に暇がない。
元々はイーロン・マスクらによって立ち上げられた、OpenAIがリリースしたものだが、本年、マイクロソフトが1.3兆円という巨額投資を行うことが発表され衝撃が走った。
「検索エンジンでいちいち調べずに済む」という合理的メリットはもちろんだが、オリジナリティのある創作や、コピーライティングなどまで手がけられ、クリエイティブ分野のアウトソースも可能になってきている。「インターネット登場以来の衝撃」と述べる人も、筆者の周囲に多々おり、私自身もすっかりその魅力にハマってしまった。
あまりに高度な利便性に、人類社会がより良くなることを期待するが、同時に、恐ろしい未来すら想像されるのだ。人が人工知能に頼り切り、自らで考えなくなる社会の到来だ。自身で考えるよりもAIに聞いたほうが早い、というシーンが増えることは、少なくとも容易に想像がつく。
半世紀以上前に予想していた作品
実は、こうした社会を半世紀以上前に予想していた作品があった。「漫画の神様」手塚治虫による『火の鳥 未来編』(角川文庫)だ。
西暦3404年、発展しすぎた人類社会は、緩やかに下降の道を下っていた。人々は無気力の塊となり、自ら考えて意思決定することなしに、都市全体を制御する電子頭脳「ハレルヤ」に全ての判断を委ねていたのだ。
主人公の1人は、恋愛の趨勢までも人工知能の命令に従うようになり、最終的に人工知能による核戦争が始まり、人類が滅ぶという顛末に及ぶ。こうしたストーリー自体は、その後も映画『ターミネーター』などで描かれていった世界観に近いが、これらを1968年時点で精緻に描いていた点は驚きの限りだ。いま読み返しても非常に新鮮な作品であり、この時代だからこそ参照し直すことを推奨する。