起訴状によると、トランプ氏はまず、20年大統領選での大勢が判明した直後の同年11月4日から5日にかけて、接戦が伝えられたジョージア、ペンシルベニア、アリゾナ、ミシガンなど6州の知事、州務長官、州議会議長(いずれも共和党)らに直接電話を入れ、「他州からの投票者が多数あった」「開票数が投票者数を上回った」「すでに死去した有権者が投票数に加算された」「投票集計機に手が加えられた」など、いずれも事実に反する〝選挙不正〟を根拠に、開票作業のやり直し、または投票結果凍結に向けて直ちに行動を起こすよう要求した。
これに対し、大統領からの直訴を受けたいずれの州も、選挙不正の有無について慎重に再度調査した結果、不正は認められず、その旨、ホワイトハウスに返答した。
しかし、トランプ氏は納得せず、大統領選挙結果を凍結するか、自らを「当選者」とさせるための最後の〝ウルトラC作戦〟を展開することになる。
それが、大統領選挙結果を最終承認する上院議長兼務のペンス氏の立場を利用した苦肉の策だった。
2人の間での〝交渉〟の実録
起訴状は、作戦の具体的内容と狙いについて、以下のように指摘している:
「2020年12月23日、被告(トランプ)は支持者向けに自らのツイートで『ペンス作戦カードOperation‘Pence’ CARD』の表題付きメモを発信、その中で『副大統領は(上院議長としての)立場上、勝敗のカギを握る6州から選出された選挙人を独断で否認することができる』と事実と異なる主張を展開した」
「同日、第二共謀者は、ペンス副大統領に対し被告を『大統領選最終認定勝利者』と違法に宣言させるという2ページの覚書を支持者に回覧させた。この覚書の中で共謀者は、具体的に『7つの州が二通りの選挙人団名簿を提出した』と偽り、副大統領に『この7州での混乱が続く以上、いずれの州の選挙人団の認定は無効』と発表させ、最終的に『トランプ大統領再選』を認定するよう主張した」
この動きと並行して、同年12月下旬から翌年1月初めにかけて、トランプ氏とペンス氏との間で、選挙結果の扱いをめぐり4回にわたり直接電話でのやりとりがあった。
起訴状は、核心に迫るその内容を以下のように詳しく説明している。
「12月25日、ペンス副大統領の方からクリスマス祝賀のあいさつのため電話を入れたところ、大統領はいきなり話題を翌1月6日、議会で予定されている大統領選挙人票数の最終確認問題に切り替え、『当日の大統領選挙人票を却下してほしい』と要請した。これに対し、ペンス氏は『ご存じのように、私にはそのような権限はない』とはねつけた」
「12月29日、被告はペンス氏に改めて電話し、偽って『司法省は接戦州における選挙不正の証拠を見つけつつある』と伝えた。このときの会話内容は、ペンス氏が書き残したメモにも記載されている」