2024年11月22日(金)

バイデンのアメリカ

2023年8月8日

 「2021年1月1日、ペンス氏が『副大統領には憲法規定により、問題州における大統領選挙人票を否認し、差し戻す権限がある』とする訴えに反対していることを知った被告は、ペンス氏を再び電話で呼び出し、侮辱した。これに対し、ペンス氏は『自分にはそんな権限もないし、そのこと自体が不当行為だ』と反論すると、被告は『君は真面目過ぎるのだ』と諭した」

 「1月3日、被告はペンス氏に再三電話をかけ『副大統領は大統領選挙人票を却下する絶対的権限を持ち、選挙結果自体をひっくりかえすことができる』と迫った。ここでもペンス氏は『自分にはそのような権限もない』『選挙結果無効の訴えは前日、控訴審でも却下されたばかりだ』と重ねて反論した」

 さらに起訴状によると、トランプ氏は、翌1月4日、第二共謀者、ペンス副大統領、副大統領首席補佐官、副大統領顧問を大統領執務室に呼び集め、問題諸州での選挙不正を理由に、バイデン候補側の選挙人票を議会最終審議で認定せず、該当州の議会に送り返すよう、改めて副大統領の説得に乗り出した。

 このやり取りの中で、副大統領は、選挙人票を州議会に差し戻すべきだとする第二共謀者の主張に弁護の余地はないと反論したところ、共謀者は「もちろんこれはだれも試したことはない」としどろもどろに答えた。

 そこで、副題大統領はすかさず、大統領に向かい「今の返事を聞かれましたか?あなた自身の顧問さえも、私にそんな権限があると確答できません」と述べ、反応をうかがった。大統領は「いや、まあいいんだ。副大統領が独断で選挙人票を却下するためのほかの提案を実行に移した方がいいだろう」と含みのある答えで応じた。

そして引き起こされた議事堂襲撃事件

 そして1月5日になって、「ほかの提案」の中身が明るみに出ることになった。

 この日、トランプ氏は首都周辺諸州の支持者たちに向けて、数回にわたるツイッターを通じ「明日6日、ワシントンに参集しよう」と抗議デモを呼びかけた。大統領選挙結果の最終承認審議が行われることになっていた連邦議事堂乱入・占拠事件の扇動という危険な画策だった。

 しかもこの呼びかけの際、大統領は「ペンス副大統領が上院議長として、大統領選挙結果を覆し、自分に有利な結果をもたらしてくれる」との根拠のない見通しを開陳するに及んでいた。さらに同日夕刻、トランプ氏はペンス氏を執務室に呼び寄せ、二人だけの差しの話し合いの中で、翌6日の議会で選挙結果最終承認を拒否するよう改めて迫った。

 しかし、ここでもペンス氏は従来通りの主張を繰り返し、要請を断ったところ、大統領はいら立ちを見せ、「こうなった以上、私は君を公の場で批判せざるを得なくなるだろう」と暗に脅した。

 この会談結果を直後に知らされたペンス副大統領の首席補佐官は、大統領による公然たる名指し批判によって副大統領に身の危険が迫りつつあることを懸念し、ただちにシークレットサービスに対し、警護を強化するよう要請したという。


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