副大統領側近たちが案じた通り、6日のトランプ支持派による議事堂襲撃事件では、一部の過激集団が「ペンスを取り押さえろ」「議長席から引きずり下ろせ」などと叫びながら、議事堂内に乱入してきたため、副大統領は警備に当たっていた議会警察の手で、事前に秘密の退避場所に緊急避難させられる騒ぎとなった。
結局、翌日未明になって、議事堂内の大混乱が続く中で、ペンス副大統領が議長席に戻り、「バイデン大統領当選」の最終認証宣言を行ったことで、トランプ氏側の画策した最後の「ペンス作戦カード」も水泡と化し、トランプ再選の野望はすべてついえた。
記録されるべき「勇気ある行動」
今回、連邦大陪審は、20年大統領選で敗北した結果を覆そうとし、米議事堂占拠事件を引き起こしたとして、4つの罪でトランプ氏を起訴したが、その核心的部分は、ペンス副大統領に焦点を当てた、上述したような執拗なまでの籠絡工作にあった。
しかし、ペンス氏の民主主義護持の確固たる信念は、トランプ氏との対面での確執を通じ、最後まで微動だにすることはなかった。
その後も、今日に至るまで、ペンス氏の主張は一貫して変わっていない。
それどころか、「トランプ起訴」が発表された23年8月1日夜、同氏は声明を読み上げ、「自らをわが憲法の上位に置こうとするいかなる者も、合衆国の大統領になるべきではない」として、トランプ次期大統領候補を厳しく批判した。
これに対し、トランプ候補はただちに、ソーシャルメディアを通じ「本来なら、トランプ政権のメンバーとして愛されるべきなのに、(24年大統領選への出馬を表明している)彼が引き寄せる群衆や支持者は誰もいない……あわれなマイク・ペンス」などと嘲笑した。
実際、これまでの共和党大統領候補に対する各種世論調査によると、トランプ氏が30~40%台と独走状態を保っているのに対し、ペンス支持率はひとケタ内のまま低迷し続けている。トランプ氏による前回大統領選挙結果の転覆工作に最後まで抵抗し続けたことが、響いていることは間違いない。
しかし、仮にペンス氏が、来年夏の共和党大会での指名獲得レースで惨憺たる結果に終わったとしても、米国民主主義の根幹を揺るがす不正にくみせず、正義を最後まで貫き通した同氏の勇気ある行動は、決して忘れられることはないだろう。