(3)「対外経済関係・民営企業政策の先行き不透明感の高まり」対策:前者に対しては、国務院として「外資の投資環境を一層最適化し、外国投資誘致を強化することに関する意見」を公表し、対外開放継続を明確化した。導入外資の質を向上しながら、外資に対する内国民待遇保障、投資権益保障、外資の外国籍従業員の出入国措置の改善、財政・税制面での支援強化、といった従来からの措置を再確認している。また、発展改革委員会、商務部などが在中国外資系企業代表と意見交換会を実施し、意思の疎通に努めている。
後者に対しては、党中央・国務院が「民営経済の発展・壮大化に関する意見」を公表しており、発展改革委・工業情報化部・全国工商連合会が共同記者会見でその内容の説明を行っている。
中長期的課題も解決されていない
中国政府が経済の直面する問題点を認識し、対策を講じ始めていることは評価できる。しかし、政策内容を仔細に検討すると、22年に既に打ち出されていた政策パッケージと本質的な差はない。22年の政策を実施した結果が現状だとすると、経済のこれ以上の失速を避けるためには、上記した政策だけでは不十分である。
第1の問題が需要不足であることは、消費者物価、工場出荷価格がともにマイナスを記録していることから明らかである。需給ギャップを埋めるために中央政府=財政が出動するべき段階に達していると思われる。
23年の5%成長という目標は、22年からの回復という要因を考慮すれば、追加の景気刺激策無しでも達成できるが、このまま対策を打たなければ、既に見たような景気下押し要因がさらに進行し、24年以降の成長率を4%台に下振れさせる可能性がある。アジア開発銀行、世界銀行、国際通貨基金(IMF)などが4月以降公表した成長予測は軒並み4.5~4.6%となっている。
第2の問題は、成長率の下落に加えて冒頭の表に示したような中長期的課題が顕在化していることだ。これらの課題は当面の景気下押し要因であり、かつそれへの対策を怠れば経済の長期停滞は不可避となる。一方で、たとえば格差問題については、消費需要喚起策などの中で対策をとることも可能である。当面の景気対策と中長期的課題への対応を同時に行うことができるし、そうすべきである。
対外経済分野では、欧米を中心とした諸国とのデリスキングが継続する。また、中国自身が、国家安全保障を最重視する「総合的国家安全観」を追求していることもマイナス要因だ。
技術国産化や海外との技術交流制限は、欧米も実施しているが、それが経済・技術のブロック化に行きつけば、中国経済の大きさからして世界全体が低成長に陥る恐れがある。中国も世界もそのリスクに思いを致す必要があろう。