時間外労働の上限規制への対応(2024年問題)、深刻な高齢化、なり手の不足……。持続可能な建設業にするには何が必要なのか。日本建設業連合会の宮本洋一会長に聞いた。
編集部(以下、──)2024年問題に対し、日本建設業連合会ではどのような取り組みをしているか。
宮本 工事現場の4週8閉所や週40時間稼働を原則とした適切な工期の設定などを盛り込んだ「適正工期確保宣言」を先日出した。他産業と比べて建設業の労働時間が長い、休日が少ないなどの客観的データを示したパンフレットを作成したり、キャンペーンを展開したりして、業界全体の総意で働き方改革に取り組んでいることを発注者の皆様にも説明し、理解を得られるよう努めてきている。
建設業は、場所が固定されている製造業(工場)と違い、現場ごとにつくる物も違えば、地形や気象などの条件も全く異なる。昨今の夏の炎天下での作業は極めて過酷だ。また、毎回決まったメンバーで働けるわけでもない。そうした事情もあり劇的に生産性を上げることが難しい中で、休日を増やすということは工期の延長やコストの増大につながる。だから、建設業の置かれた状況が深刻であることを、発注者の皆様にも理解してもらう必要がある。
足元では、国が主体となる公共事業を中心に理解が進みつつあるが、民間事業の工事についてはまだまだ改善の余地がある。予算面での制約があることは重々承知している。ただ、だからといってそのしわ寄せを全て建設業が受けるということでは解決しない。お互いに話し合って解決策を見出したいところである。
──建設業ではなり手不足と高齢化の問題が深刻である。
宮本 特に高齢化は深刻で、あと10年もすればさらに人が減る。機械はあってもそれを扱う人間がいないと、発注者が推進したい事業やプロジェクト自体が進まなくなってしまう。やろうと思ってもやれない。それを本気で危惧しており、だからこそ、これまであまりやってこなかったような発注者の皆様への働きかけを積極的に展開している。
ロールモデルになる技能労働者を増やしていくことも必要だ。私が入社した当時も休日は少なく、労働時間は長かった。それでも若い人はたくさんいた。なぜかといえば、正当な対価が支払われており、責任ある立場の人の中には外車を所有している人もいるなど、憧れと共に目標になる人が身近にいたからだ。
日常生活を送る上ではあまり意識されないが、建設業とは、日本の国土や国民生活の基盤であるインフラの構築、整備、メンテナンスなどに従事する仕事である。それに見合った賃金を支払うことも必要だ。
女性が活躍できる環境の整備も急務だ。総務省の「労働力調査」によれば建設業従事者のうち、約18%は女性だ。現場においても、トイレやパウダールームの設置、軽量な安全帯の整備など、物理的な改善は少しずつ進んでいる。女性社員も将来的には経営層になっていく。そのためにも、現場を経験した上でマネジメントできる人材を育てていく必要がある。
現在では
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