2024年4月14日(日)

Wedge2023年9月号特集(きしむ日本の建設業)

2023年8月23日

将来のインフラの経年劣化が避けられない中、構造物のメンテナンスの重要性が増している。どのような人材や技術が求められるか、橋梁工学が専門の三木千壽氏に聞いた。
三木氏が設計、製作、施工に至るまで総合的に携わった、東京ゲートブリッジ(segawa7/gettyimages)

編集部(以下、─)高度経済成長期のインフラの更新期が迫っている。

三木 社会インフラの老朽化に対する関心が高まる契機となったのは2012年12月2日に発生した中央自動車道笹子トンネルでの天井板落下事故である。

三木千壽(Chitoshi Miki) 東京都市大学 学長 1947年生まれ。徳島県出身。専門は、構造工学、鋼構造学、橋梁工学。東京工業大学名誉教授。著書に『橋の臨床成人病学入門』(建設図書)、『橋梁の疲労と破壊 事例から学ぶ』(朝倉書店)など多数。

 翌年の13年3月、太田昭宏国土交通大臣(当時)は「社会資本メンテナンス元年」を宣言し、同年6月には道路法を改正し、「道路の老朽化や大規模な災害の発生の可能性等を踏まえた道路の適正な管理を図るため、予防保全の観点も踏まえて道路の点検を行うべきことを明確化」することが明文化された。

 まさに、維持管理が法的な根拠のもと、義務化されたのである。

 14年5月には「最後の警告、道路橋の老朽化対策の本格的実施」が発表され、道路構造物の老朽化対策への取り組み体制が一気に進んだ。点検の実施は、「5年に1度、高い技術を有する者による、近接目視」として、統一的な尺度で道路インフラを検診することを規定している。さらに、点検と診断の結果の見える化と情報共有、国と地方自治体の連携、劣化の大きな原因である重量制限違反車両の取り締まり強化なども求めた。

 14年6月には国交省道路局から「道路橋定期点検要領」が公表され、全ての橋梁はこの点検要領に基づいて点検が行われることとなった。

 深刻な問題は、この分野はこれまでほとんど関心が払われなかったことから、研究者や専門家が少ないこと、そして最も厳しい事実は、習熟した点検技術者の数が限られていることである。

 一般的に土木技術者は新しい構造物や施設の設計・建設への興味が高い。しかも、維持管理分野は事業費が低く、研究や技術開発に対する意欲も低い。そのため維持管理は、ともすると後ろ向きの仕事に見え、進んで取り組むような対象ではなかった。その意味で、昨今の構造物の維持管理への関心の高まりはわが国にとって大きな好機だ。

─研究者や専門家が少ない中、対応できるのか。

三木 悩ましい問題である。インフラ50年寿命説がいわれてきたが、もし、そうであれば、高度経済成長期に建設された高速道路や東海道新幹線の構造物は全て取り換えなければならなくなる。「そうではないだろう、そのようにしたくない」というのが私の強い思いである。

 私は、構造物の経年劣化は、①設計、②製作、③施工、④維持管理の結果として生じる現象であり、①~④がきちんとなされていれば、それほど起きるものではないと考えている。


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