福井店のある福井駅では、今、北陸新幹線の金沢―敦賀間開通が23年末に予定されているのに合わせ、駅前の都市開発が進んでいる。ただ、その取り組みは必ずしもうまくいっている訳ではない。
特に心配されるのは07年に福井駅東口にオープンした図書館や地域交流プラザ、県民ホールを備えた8階建ての複合施設「アオッサ」だ。オープン当初よりテナントで苦戦していたが、現在でも1階に関しては、ショップ2店舗とカフェ1店舗のみとなっている。
福井駅周辺では店舗に加えてイベントスペースやマンションも抱える大型複合施設「パピリン」が16年に開業し、また、駅直結で土産物店や飲食店を多数抱える「プリズム福井」は改築・増床され、24年に「くるふ福井駅」として開業する。「アオッサ」や西武福井店はこうした流れの中でこれらの新設施設との競争に打ち勝ちながら相乗効果が得られるよう、ビジネスモデルを変革できるのであろうか。
百貨店の多くが立地する中心市街地の活性化が地方で難しいのは事業を担う経営者や行政の問題だけではないのは明らかだ。地方では人口減少が進む中、モータリゼーションの進展に歯止めがかからず、中心市街地は郊外との激しい競争にさらされているからだ。実際、秋田や福井などでは、バイパス沿いに住宅街などが開発されている。
一方、三越伊勢丹は三大都市圏や地方の政令指定都市に多くの店舗が立地している。それ以外でも高松や松山のように、比較的都心居住が進んでいるエリアで店舗を展開している。地方都市の変遷を見据えられたかどうかで明暗が分かれた形となっている。
電鉄系デパートのビジネスモデルも終焉?
さらに、旗艦店である西武池袋でも、足元がぐらついている。
池袋はJRや東京メトロ各線や東武東上線、西武池袋線などさまざまな鉄道を結ぶターミナル駅として存在している。西武池袋はそうして創出された人の賑わいを国内外の有名ブランドや、催事といったイベントで呼び込んで収益を上げてきた。
ファッションに強いとされる西武池袋であるが、特にグルメ系にもかなり力を入れている。百貨店の定番である北海道展のような地域別催事ではなく、全国の名店を集めたオールスター型の「味の逸品会」は大人気だ。また、22年にデパチカに設けられた「諸国銘菓」は全国各地の著名お土産お菓子が期間限定で集められ、それぞれがお菓子一つから試し買いできるシステムとなっており、大きな評判を呼んでいる。
ところが、JR各線や東武東上線、西武池袋線は直通運転などにより東京都心や東京を飛び越えて神奈川県にまで延伸を進め、乗客の一部は確実に池袋で乗り換える機会が減っている。通勤の帰りなど「どうせ乗り換えるなら」という需要が取り込めなくなっている。
また、コロナ禍で大企業を中心に広がったリモートワークは特に東京圏の通勤客の減少につながっているのも懸念される。ターミナル駅に立地し、自ら経営する路線の住民を集客することで繁栄してきた電鉄系百貨店は、西武池袋以外でもこれまでのビジネスモデルの変革が求められているといえよう。