米中の対立関係について多くの人は第2の冷戦と呼び、他の人はこの類似性を否定する。言えることは、世界最大の二つの経済には協力の余地はほぼなく、紛争には大きな余地があるように見えるということである。
第1の冷戦との最大の違いは、ソ連は世界経済のかなりの部分から孤立していたのに対し、中国は国際経済に組み入れられ、この30年間、知財の盗取だけでなく、固有の技術革新能力も獲得した点である。中国は通信インフラ、港湾へのアクセス、保護国での軍事基地等を築き上げた。中国の影響力は単なる重商主義から政治的影響に進化した。
今日の米中対立を考えるにあたっては、冷戦から5つの教訓が得られる。
第1は、同盟国は重要であるということ。中国にとっては、もっとも重要なロシアがウクライナ戦争でお荷物になっている。その間、米国は、フィンランドとスウェーデンの加盟で強化された北大西洋条約機構(NATO)、アジアでも豪州、韓国、日本のような強い同盟国を持つ。インドとの関係も深まっている。
第2の教訓は、抑止はそれを支える軍事力を必要とすること。中国の軍事力は改善され、ウクライナ戦争と台湾に関する戦争ゲームは西側の弱さを露呈した。西側は直ちにより先進的兵器の調達、重要な物資の安全な供給網や防衛産業基盤の再建をしなければならない。強さによる平和は実際に機能する。
第3は、事故による戦争を避ける努力をすること。今日もわれわれは冷戦中に始まった米軍とロシア軍の間の事故防止のための接触から利益を得ている。AIを含む今日の技術の性質に鑑み、米中戦争はより危険でありうる。中国は米中の航空機や船舶の衝突に近い接近にかかわらず、事故防止を討議するのに乗り気でない。これは誤りである。
第4の教訓は、ソ連内部の矛盾が結局ソ連を弱くすると論じたジョージ・ケナンの観察である。中国は経済的に強いが、デフレの不動産セクター、高い若者の失業率、人口問題等の矛盾も出て来た。権威主義の指導者は政治的統制を選好している。
冷戦からの最後の教訓は、何も不可避ではないということ。今日の成功は民主主義国が自らの欠陥や矛盾に取り組むことを求めている。かつて、民主主義国は、社会での反対意見の抑圧を強さとする権威主義の指導者により低く評価されてきた。
トルーマン、レーガン、ブッシュの冷戦時代の最善の大統領は、権威主義者は間違っていることを理解していた。今の指導者が同じような決意を持てば、この新しい超大国間の対立関係も自由世界にとっての勝利になるだろう。