2024年12月9日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年10月5日

 ワシントン・ポスト紙は、バイデン政権は中国やロシアの影響力強化の試みやイランの脅威を抑止するため、ペルシャ湾地域との関係強化の一環としてバーレーンと戦略的安全保障協定に調印したが、この協定が他の湾岸アラブ諸国と同じ様な協定のひな形になることを期待しているという解説記事‘US pact with Bahrain seen as model for strengthening Persian Gulf ties’を9月13日付けで掲載している。要旨は次の通り。

 9月13日、米国とバーレーンは、戦略的安全保障経済協定に調印した。バイデン政権は、ブリンケン国務長官が言う通り、この協定がペルシャ湾岸のアラブ産油国との関係強化のひな形となることを期待しており、米国は一層の防衛、技術協力、さらにインテリジェンス能力の向上を提案している。

(Rainer Lesniewski/gettyimages)

 さらに、この協定は、主要20カ国・地域(G20)サミットでバイデン大統領が発表した中東を経由するインドと欧州を結ぶ鉄道、海上輸送網(新経済回廊)へのバーレーンの参加も含んでいる。バイデン政権は、中東のもめ事に巻き込まれないように注意深く中東から距離を取っていたが、中国やロシアの影響力強化の試みやイランの脅威を抑止するために中東、特にペルシャ湾地域との関係強化の広汎な努力の一環としてこの協定を結んだ。

 バイデン政権の高官は、「この協定は二国間協定であるが、安全保障、外交、経済、社会、紛争予防について米国と価値観を共有する国々との同様の協定締結のために役に立つ」と説明している。匿名の米政府関係者は、「この協定は、法的拘束力はあるが、米議会の承認を得なければならない条約ではない」と言う。

 この政府関係者によれば、この協定は相互防衛条約のレベルではなく、「(侵略が起きた場合に)直ちにパートナーや同盟国と協議し、侵略に対抗するためにもっとも相応しい方法を決定する」という標準的な安全保障協力であり、このような協定は、最悪の事態を招かないためである。

 ペルシャ湾地域で統合的な防衛、インテリジェンス、抑止のためのネットワークを構築し、米国製武器の購入を促し、イランの侵略を阻止するための共同戦略を発展させようとするバイデン政権にとり、バーレーンは手を付けやすい相手である。バイデン政権の前任者達が避けて来たゴールは、域内最大でかつ支配的な国であるサウジアラビアである。

 過去数年間、バイデン政権はサウジアラビアが(イスラエルと国交を樹立する)アブラハム合意に参加するよう説得してきたが、大きな障害がある。それは、サウジ側がその条件として米国と相互防衛条約を締結することとウラン濃縮技術を含む核燃料サイクルを保有することを認めるよう望んでいることである。この両方とも、バイデン政権としては、簡単に受け入れる訳には行かないし、米議会の強い反対に遭うであろう。


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