2023年12月1日(金)

都市vs地方 

2023年10月13日

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吉田浩 (よしだ・ひろし)

東北大学大学院 経済学研究科教授

高齢経済社会研究センター長。1995年一橋大学大学院博士課程満期退学、97年東北大学大学院経済学研究科助教授、2007年より現職。会計検査院第9代特別研究官、経済企画庁経済審議会特別委員も歴任した。著書に『男女共同参画による日本社会の経済・経営・地域活性化戦略』(河北新報出版センター)、『厚生労働統計で知る東日本大震災の実状』(統計研究会)など。

 この10月1日より順次、全国の各都道府県で2023(令和5)年度の最低賃金の改定が実施される。最低賃金とは、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障するため、地域別最低賃金(時間給)を法で定めるものである(最低賃金法、第9条)。法で定められたものであるから、このレベル以下の賃金で労働者を雇用することは違法となる。

(mapo/gettyimages)

 最低賃金は、国際労働機関(ILO)条約に基づく「使用者及び労働者」が同数かつ平等の条件で参加する公・労・使の三者構成の最低賃金審議会(厚生労働省)において審議し、決定される。その際には、地域(各都道府県)における①労働者の生計費、②賃金、③通常の事業の賃金支払能力の3点を考慮して定めるとされている。このため、都道府県別に最低賃金の金額は異なるものとなっている。

 今回の最低賃金改定で最も注目するべき点は、全国平均で初めて時給1000円を超えるレベルが設定されたことである。

(出所)厚生労働省「2023年度の最低賃金決定額について」(2023.08.31) 写真を拡大

 表1に示すように、前年に比しての改定幅も史上最高の+43円となり、これまでで最も踏み込んだ。この理由としては、以下の3つが考えられる。

 第1に昨年来の物価上昇のため、賃金の実質的な購買力は下がってきていたことがあげられる。すなわち、実質賃金は低下してきたということがいえる。

 これに対応して、政府は「賃金と物価の好循環」をスローガン(「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」)として経済政策を運営してきたため、賃上げを望んできたという理由が2番目である。

 そして、3番目に新型コロナウイルスの流行に一応の終息が見いだせたことにより、経済活動が再び回復し、賃上げの余地が生まれてきたことがうかがえる。


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