2024年4月21日(日)

INTELLIGENCE MIND

2023年10月28日

 前回、米国が日本の外交暗号を解読していたことに触れたが、日本側も一方的に暗号を解読されていたわけではない。日本陸海軍、そして外務省の暗号解読組織も、欧米諸国の使用していた外交・軍事暗号を傍受、解読していたのである。

ドイツのエニグマ暗号を攻略する機械も運用していた、米国の「コード・ガールズ」(SHUTTERSTOCK/AFLO)

 日本が暗号解読の重要性を認識したのは、1923年にポーランド参謀本部のヤン・コワレフスキー大尉を日本陸軍に招聘して、ソ連暗号の解読講習を行ったのがきっかけであった。その後、陸軍参謀本部内に暗号解読班が設置されることで、ソ連や欧米諸国の使用する暗号が解読されていく。陸軍の暗号解読組織は、海軍や外務省よりもかなり高い能力を持っており、米国務省が使っていた最高レベルのストリップ暗号も解いていた。

 さらに陸軍は英国や中国、ソ連の外交・軍事暗号のかなりの部分を解いており、陸軍に限っていえばその能力は世界屈指のものであったといえる。日本軍はこのような暗号解読情報を基に戦略的判断を行うこともあり、40年9月の北部仏印進駐の際には、日本軍が進駐を行っても米英は介入しない、という情報を得てから計画を実行した。このように太平洋戦争開戦までに、日本軍の暗号解読能力はかなりの実力を示していたが、その後、戦争が始まると暗号戦において劣勢に追い込まれることになる。

海戦を通じ露呈した
再発防ぐ意識の欠如

 42年6月のミッドウェー海戦の直前、米軍の暗号解読組織の貢献によって、米海軍は日本側の狙いがミッドウェー島にあることを知り、待ち伏せによって日本海軍の空母部隊を撃滅したことはよく知られている。当時の日本海軍の暗号は5数字暗号と呼ばれるもので、日本語の単語を5桁の数字に置き換え、それに5桁の乱数を加算することで組み立てられるかなり高度なものであった。ただし暗号が複雑になればなるほど、それを組み立てる側のミスも生じるようになる。米海軍の暗号解読者たちは、日本海軍の通信の中に生じるミスに着目し、それが何を意味するのかを推察しながら暗号を理論的に解読していった。

 ただミッドウェー作戦の直前に問題となったのは、解読された日本海軍の指令の中に地点を表す「AF」という略語が現れたことであった。ハワイにある暗号解読班は、既に「AF」がミッドウェー島を指すことを察知していたが、ワシントンの解読班は「AF」をミッドウェー島ではなく、そこから1000キロメートル離れたジョンストン島だと予測し、組織内で意見が分かれたのである。

 そこでハワイ班は一計を案じ、ミッドウェー島の守備隊に、「真水が残り少ないので至急送られたし」の電報をハワイに打つように命じた。ミッドウェー島の守備隊が命じられた通りに電報を打つと、ミッドウェー方面に注意を払っていた日本海軍はこの電信を見逃さなかった。

 同通信は、埼玉県と東京都にまたがり編成されていた海軍大和田通信隊に傍受されており、情報を得ると同通信隊は日本海軍の各部隊に対して「AFには真水が残されていないもよう」という情報を通達した。そしてハワイ班がこの日本海軍の通信を傍受することで、「AF=ミッドウェー島」が証明されることになり、米海軍は日本海軍によるミッドウェー作戦を確信することになった。こうして6月5日に戦端が開かれると、米海軍は大勝利を収めたのである。


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