石油メジャーの株価も市場の見方を反映した値動きだ。あまり大きな上昇は見せていない。エクソンモービルの株価はハマスの攻撃後最高7%上昇したが、その後下落し23日の始値では5%の上昇だ。英エネルギー大手のBP株も先週9%上昇したが、現在は6%に落ち着いている。シェブロンの23日の株価は攻撃前を若干下回っている。
だが、原油価格高騰の可能性は依然ある。問題は供給の隘路、チョークポイントのホルムズ海峡だ(図-4)。海峡に臨むイランはイスラエルのガザ地区侵攻に警告を与えている。イランがホルムズ海峡を封鎖すれば中東からの原油とLNG輸出は大きな影響を受ける。
そのイランに対する制裁が強化され、原油輸出が厳しく監視されるようになっても市場価格に影響が及ぶが、その可能性は高くないし、影響を受ける数量も限定的だ。
ホルムズ海峡を通過する原油とLNG輸送に影響が生じれば、価格上昇は避けられそうにない。そうなれば原油価格は1バレル当たり100ドルを超え、140ドルになるとの観測も欧米では出ている。
中東の石油に依存する日本
図-5が世界の石油生産国のシェアを示しているが、国内消費量が相対的に小さいロシアと中東諸国が原油と石油製品の純輸出量(輸出数量から輸入数量を引いた数字)では大きなシェアを持つ(図-6)。
サウジアラビアが世界一の約23%のシェアを持ち、ロシアが21%と続く。中東諸国のシェアは合計では52%。世界は依然として中東に依存している。中でも日本の中東依存度は極めて高い。
22年の日本の原油輸入相手国に占める中東諸国の比率は94%になる(図-7)。1億3250万トンの原油に加え、3850万トンの石油製品の輸入があり、中東諸国が32%のシェアを持つ。合計すると石油における中東依存率は80%だ。
日本以外の主要国の事情は異なっている。2000年代からシュールオイルの生産が開始され、石油でも自給率100%を達成した米国の中東依存度は下がる一方だ。ロシアへの依存度が高かった欧州諸国の中東依存度も低い。