人口減少社会は日本だけでなく、諸外国にとっても喫緊の課題だ。フランスと中国の〝現在地〟を垣間見ながら、日本への示唆を読み解こう。「Wedge」2023年8月号に掲載されている「日本の少子化対策 異次元よりも「本音」の議論を」記事の内容を一部、限定公開いたします。
6月13日に、政府は「こども未来戦略方針」を閣議決定した。この方針では、「次元の異なる少子化対策」を打ち出し、予算規模を2024年度から3年間かけて年3兆円台半ばの拡充を図ることとしている。その財源の具体案については、医療費や介護費の徹底した歳出改革や社会保険料の上乗せなどを含め、今年末までに結論を得る方向で進んでいる。なお、子ども・子育て関連予算充実のための財源確保を目的とした消費税などの増税は行わない、と明言している。
コロナ禍で少子化が加速し、昨年から出生数80万人割れが予測される中、今年の年頭から、少子化対策の論議は以前よりも多くの関心を集めた。財源にも議論が及び、年頭に与党幹部が消費税を含め議論すると言及しただけで、たちまち消費増税への反対論が沸き上がった。そして、岸田文雄首相や松野博一官房長官は直ちに、子ども予算増額のために消費税に触れることは考えていないと火消しに回った。
次に浮上したのは、社会保険料の上乗せだった。児童手当の拡充の具体策が明確になるにつれて、予算規模も相当大きくなることが認識され、それだけ負担増も大きくなることが現実味を帯びてきた。それに歩調を合わせるかのように、社会保険料の上乗せに対する反対論も拡大していった。
ここに至って、政府・与党は、負担増を前面に出すことに躊躇するようになった。「こども未来戦略方針」は、子ども・子育て予算倍増は高らかに謳うが、国民に実質的な追加負担を求めないことを強調し、その財源として徹底した歳出改革を前面に出す形で取りまとめられた。
わずか半年足らずの出来事である。