ブナの実で翌年のツキノワグマの行動がわかる
ツキノワグマの好む餌であるブナの実が凶作だと、餌を求めてクマが里に出てくると言われている。
図1は、つくば市にある国の森林総合研究所の2003年度の研究成果選集の中の「ブナの実がならない年はツキノワグマが里に出てくる?」に掲載されたものである。
青線が低いとブナは豊作である。ブナはどちらかと言うと、ほとんどの年が凶作気味で、5~6年に1度大豊作がやってくる。この図で言うと2000年がそれに当たる。
この年はクマが餌の豊富な奥山のブナ林にいたようで有害獣駆除された数も0である。栄養たっぷりで冬眠した雌グマは子グマを生むので、ブナの大豊作の翌春は子グマが多い。そしてブナの大豊作の翌年は決まって大凶作となるのだ。
数を増やしているクマはたまったものではない。クマたちは餌を求めて大挙に里に下ってくるのだ。01年の青線の高さと赤線の高さがそれを証明している。
筆者は、ちょうど01年8月に秋田森林管理局に赴任しており、確かに平野部へのクマの出没が話題になっていた。高速道路の秋田道にもクマが現れて、交通規制が行われたりしていた。
図2は昨年22年の東北地方北部のブナの結実度を示したもので、豊作を示す赤丸印が結構目立っている。してみると今年は凶作で、クマが大量に里から市街地まで出没する事態となったことと附合する。
であれば、今年のようにクマの出没頻度が高くなる事態はある程度予想できたはずである。先の研究成果にも次のような論述がある。
「クマ出没注意を喚起する『警報システム』の 構築が可能であることを示しています。ただし、警報といっても頻繁に出す必要はなく、クマの出没が大幅に増えるような特別な年に出すことができればいいのです。ブナの実の成り具合を長期間にわたってモニタリングしておけば、大豊作の年がわかります。その大豊作の年さえ把握できれば、翌年大凶作へと転じる際にクマ出没数が大幅に増加すると予測できるからです」
さらに研究を進めてより的確な予想と対策がとれるようになることを期待したい。