2024年4月21日(日)

Wedge REPORT

2023年11月23日

 林学では瘠悪林地(せきあくりんち)と呼んで、その改良が課題だった。そのような疎林であれば、クマが出てくればすぐわかる。撃ち殺して山村の貴重なたんぱく源となったりした。他の動物も同じである。

 高度経済成長期から始まった山村からの人口流出と燃料革命によって、里山は利用価値を失って放置されたり、人工造林されたりして徐々に蓄積の高い森林へと変化していった。野生動物も保護重視の鳥獣保護政策によって、生息数を増やして、山間部からの人の後退を穴埋めするように進出し、平野部や都市部にまではみ出すようになったのだろう。

 そもそも野生動物は森林が住みやすいとは人が勝手に思っているだけではないのか。餌と住み処と、安全があれば野生動物はどこでも住めるのだろう。意外にも建物が建てこんだ都市は森林と同じで、人の出す残飯、屋敷の果樹が豊富で餌に困らない、樹木の多い公園や河川敷、建物の間など住み処も多い、人に危害さえ加えなければ安全であり、生息環境としては悪くない。

 クマは冬眠するから、都市には洞穴がないので生息は困難かもしれないが、空き家が目立ってきたこのごろでは油断はできない。そのうち人はみんなタワーマンションに暮らし、低層の空き家は動物の住み処となって、人が寝静まった深夜には野生動物の百鬼夜行となるかもしれない。

できなくなった柿の木の対策

 クマが里山や市街地に出没して柿の実を食べている。クマの身体能力の優秀さの1つが木登り上手である。山ではブナの木に登ってその実を食べているから、訓練も十分なわけだ。クマが柿を食べる映像を見て、柿は暖地性の樹木かと思っていたが、東北地方にも多いことを再認識した。

 柿の実がクマを誘引しないように、柿の木を伐採している地域もあるという。それに付随して過疎や住民の高齢化といった日本社会の構造的な問題がここでも浮き彫りになった。

 柿などの果樹の庭木は実をとりやすいように樹高を低く保つように剪定するのがふつうだ。樹高が低ければ住民でも伐採できる。ところが高齢化で剪定ができず、柿の木も伸び放題で大木になってしまっている。これでは専門の伐採手が必要だが、こちらも高齢化で不足している。

 地域や市町村で柿の木の伐採を進めようとしているが、過疎で空き家が増えて持ち主に連絡が取れず伐採許可をもらえない。財産保護という法的制限がネックになって、地域から柿の木を一掃することは難しい。

 山と町場の境目である農村部はクマにとって餌も豊富で暮らしやすい。集落内では猟銃も使えないのでクマにとっては安全である。自然による人間への反撃は、このような盲点を巧みについてくるのだ。


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