2024年11月22日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2023年12月8日

京料理は、本当に和食の代表なのか?

「京料理が和食の代表、という決まり文句にも異議を唱えておられますね?」 

 1970年に京大に入学した際、兵庫県尼崎市出身の有賀さんは、にしんそば、湯豆腐、漬物の京料理を「爺むさい(年寄りくさい)」と思った。

「京料理が脚光を浴びるのは、冷凍技術と交通インフラが発達し、全国から新鮮な食料が大量に届くようになってから。最近のことです。郷土料理としての京料理は、本来『いもぼう』に代表される、近郊でとれる蔬菜と塩干物の炊き合わせなど、質素な家庭料理でした」

 もっとも近年は、そんな新規の京料理の人気もあり千客万来。京都は年間約4000万人を超す観光客が訪れる断トツの観光地となった。

 有賀さんはしかし、現状のまま京都の観光地化が進むことにこそ、大きな危惧を抱いている。

「京都市は雇用回復のため、建物の高さ制限の緩和などを進めていますが、それは都心の田の字地区以外の地域に関してです」

 田の字地区とは都心の中核、中京区と下京区の中心地域で町衆の町家が立ち並ぶ地域だ。

「そこを特別扱いして“職住近接の歴史的都心”としていますが、これは事実と異なります。現在、残った町屋に居住するのは大半が引退した年寄り夫婦です。産業的には空洞化しているんです」

 有賀さんの調査によると、バブル崩壊を機に、都心の西陣・室町の関連業者は相次いで廃業した。都心では人口は回帰したものの、雇用力は失われ、昼夜間人口比率は一貫して低下を続けている。

「京都は大学都市なので、就業先さえあれば市内で暮らしたいと考える人は多い。技能を持った高学歴の外国人の中には、京都でなら働いてみても良いという人は決して少なくないのでは」

 そこで有賀さんは、大胆な提案をする。


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