全国ベースでは、23年10月時点での前年同月に比べた総合的な品目に関する物価上昇率は3.3%であった。したがって、最低でも1万円のお年玉は1万300円程度まで値上げが必要ということになる。さらに、地域別の物価上昇率(総合)は表3のとおりである。
表3を見ると、仙台市、盛岡市、札幌市、青森市、秋田市、富山市と北国で物価上昇率が高くなっている。これは、燃料・エネルギー価格の上昇が影響していると考えられる。また、都市部の物価上昇が大きいかというとかならずしもそうではなく、東京は中位、大阪・名古屋は下位に位置している。
この結果からすれば、23年1万円であったお年玉は、実質的な購買力を維持するために200円から500円程度の引き上げが正当化されることになる。
子どもにとっての物価上昇
表3に示された物価上昇率は、お年玉を使う子どもにとってはあまり関係のない燃料や家賃、医療費などが含まれた、いわば「大人の総合的な生活」の観点からのデータであった。そこで最後に、子どもがお年玉をおこづかいとしてよく支出すると考えられる項目に焦点を絞って、地域別の物価上昇率を見てみることとしよう。
表4はお年玉による子どもの支出対象として想定した「菓子」、「娯楽用品」(おもちゃ、ゲーム等が含まれる)、「娯楽サービス」(カラオケ、ゲームセンター等が含まれる)について、物価上昇率の高い順にベスト20を示したものである。
これを見ると、菓子については東京都区部よりも物価上昇率が高い地域が多数存在し、かつ第20位までの全ての地域で10%以上という高い上昇率となっている。次に娯楽用品も地方の都市を中心に最大11%を超える価格の引き上げが見られる。そして、娯楽サービスについても、大都市圏を中心に8%から11%を超える物価上昇が観測されている。
表4の結果は、表3で2%から5%程度の引き上げで十分と思われた結果の倍以上のお年玉の引き上げを示唆している。これにもとづけば、お年玉の改定は1万円当たり最高1500円(+15%)程度の引き上げが必要となる。今回、お年玉を考えることで、大人の生活における物価上昇よりも子どもにとっておこづかいの対象となる品目の値上がりの方が大きく、「インフレの痛みは小さな子どもたちにより大きくしわ寄せされている」かもしれないことがわかった。
24年は物価も安定し、豊富なおこづかいで子どもたちが欲しいものを十分に買えるような一年になることを期待したい。