2024年11月23日(土)

プーチンのロシア

2024年1月5日

ロシア軍の弾は切れなかった

 もっとも、マクロ経済的に考えれば、ロシアが悪くない成長率を示しているのも、道理ではある。戦争は究極の景気対策とも言える。

 今のロシアのように、財政赤字を厭わず、軍事支出を拡大すれば、目先の経済が成長するのは当然だ。経済を牽引する役割を意図的に戦争に託そうとする路線は、「軍事ケインズ主義」と呼ばれるが、プーチン・ロシアは確実にその道を歩み始めている。

 実際、最新のロシア鉱工業生産統計を参照しても、伸びが目覚ましいのは軍需部門である。ある専門家によれば、現状で鉱工業生産の伸びの少なくとも3分の2は、軍需および関連部門によってもたらされているという。

 そこで、鉱工業生産の中で、特に軍需と結び付いていると考えられる部門を選び、それぞれの生産水準がどう推移してきたかを、グラフにまとめた。選んだのは、「その他の完成金属製品」(砲弾などはここに含まれると思われる)、「コンピュータ・電子・光学機器」、「航空・宇宙機器」の3部門である。

 グラフに見るとおり、軍需関連部門は、きわめて特徴的な季節変動を示している。ロシアでは年初に経済活動が落ち込むのが通例だが、軍需関連部門はとりわけ1月、2月の生産水準が低調である。それが年の後半にかけて拡大していき、年末にピークを迎えるというのが、軍需のパターンとなっている。

 ロシアの財政は1月始まり・12月終わりなので、国家発注を年度内に消化するために、年末に生産が急増するものと考えられる。23年はまだ11月の数字までしか出ていないが、12月の生産が再び顕著に伸びるのは確実だろう。というわけで、軍需生産は一直線に伸びているわけではなく、大きな季節変動を伴ってはいるが、その生産水準が全般的に高まっていることは歴然である。

 12月19日にロシア国防省で恒例の拡大幹部評議会が開催され、プーチン大統領、ショイグ国防相が演説を行った。この席でプーチン大統領は、23年の国防発注は約98%達成される見通しだと述べ、軍需産業の成果を誇ってみせた。

 ショイグ国防相はさらに具体的に、軍需産業の稼働状況について語っている。国防相によると、22年2月の開戦以来、ロシア軍需産業における生産は、戦車で5.6倍、歩兵戦闘車で3.6倍、装甲兵員輸送車で3.5倍、ドローンで16.8倍、砲弾で17.5倍に拡大したという。

 むろん、これらの数字は慎重に吟味すべきであるものの、現時点でプーチン政権が軍需産業の面からの継戦能力に自信を深めていることは、間違いないと思われる。


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