2024年11月21日(木)

プーチンのロシア

2024年1月5日

大砲とバターの両立

 ロシアの国家財政も、意外にしぶとかった。一つには、ロシア財政の柱である石油・ガス歳入が踏みとどまったことが大きい。

 エネルギー担当のノバク副首相が先日述べたところによると、23年の石油・ガス歳入は9兆ルーブルほどに達しそうということである。これは、上半期に価格が高騰した22年の11.6兆ルーブルには及ばないものの、21年の9.1兆ルーブルにほぼ匹敵する規模である。さらに、最近のロシア政府は、超過利潤税、新たな輸出税など、非石油・ガス歳入の確保にも余念がない。

 23年の連邦財政の歳出は、過去最大の32.2兆ルーブルに膨らむ見通しである。それでも、上述のとおり歳入が確保できているので、屋台骨は揺らいでいない。

 23年のロシア連邦予算は元々、対GDP比2.0%の赤字で編成されていた。しかし、実際にはそれよりも良好に推移しており、先日シルアノフ財務相が述べたところによると、対GDP比1.5%程度の赤字で済みそうということであった。かくして、財政が破綻しプーチンが戦争を続けられなくなるというシナリオもまた、遠のきつつある。

 24年のロシア連邦予算では、前年をさらに上回る36.7兆ルーブルの歳出が計上されている。とりわけ、物議を醸しているのが、国防費の大幅増である。

 24年の国防費は10.8兆ルーブルに上っており、これはGDPの実に6.0%に相当する。ロシアの国防費は22年まではGDPの3%程度だったから、そこから倍増する形だ。しかも、軍事関連の歳出は他の費目の中にも隠れており、実際の国防費はもっと多いはずという指摘もある。

 それでは、軍事費が肥大化している分、国民生活にしわ寄せが及んでいるかというと、これが必ずしもそうなってはいないのだ。少なくとも、大統領選が終わる24年3月までは、国民にそれを実感させないように配慮している。その典型例は公共料金の光熱費であり、23年はずっと据え置きで、次回の値上げは24年7月に決まっている。

 18年5月にスタートした現プーチン政権において、国民の支持率がガクっと下がった出来事があった。同年6月、受給年齢を10年間かけて段階的に5歳引き上げるという年金改革を決定し、国民の大反発を食らったものである。サッカー・ワールドカップ開幕のどさくさに紛れて発表したにもかかわらず、それでも国民の反発はすさまじかった。おそらくプーチン政権のトラウマになっていると思われる。

 最近、プーチン政権が神経質になっているものに、卵の値上がりがある。23年に卵は59%ほど値上がりし、国民の不満が募っている。政府は慌ててトルコやアゼルバイジャンから関税を免除して卵を緊急輸入することを決めた。ウクライナ侵攻や反体派弾圧では情け容赦ないこわもてプーチンが、卵ショックにはうろたえているというのは、興味深い現象である。

ナワリヌイは北極送り

 プーチン大統領は12月8日、24年3月の大統領選に出馬する考えを表明した。ウクライナでの戦況という不確定要素はあるにしても、再選に向け、これといった死角は見当たらない。公正な選挙をやっても、プーチンは過半数くらいとれるはずであり、ましてや公正な選挙ではないのだから、80%以上を得票して圧勝するのが既定路線である。

 暮れになり、反体制派のリーダーであるナワリヌイ氏が、西シベリア北部のヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所に移送されたことが明らかになった。政治犯をシベリア送りにするのはロシアの伝統だが、今回は北極送りである。


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