2024年11月7日(木)

プーチンのロシア

2024年1月10日

 2022年2月のウクライナ侵攻開始から約2年を経て、ようやく戦況で優位な立場を固めつつあるロシアのプーチン大統領は、24年3月の大統領選で圧倒的な勝利を誇示する態勢を整えつつある。政敵を〝北極圏送り〟にするなどなりふり構わぬ手法で、実質30年にわたる超長期政権を手中に収める構えだ。

プーチン大統領は次の大統領選で絶対的な地位を確立し、〝ソ連化〟への歩みを強めるのか(ロイター/アフロ)

 プーチン氏の圧勝は一方でロシア国民にとり、兄弟国家のウクライナを侵略し、破壊する行為に賛同するという、精神的な一線を越えることになる。巨大な独裁国家「ソ連」への回帰ともいえる流れが加速するのは必至で、ロシア社会は自由な言論がさらに容認されない、厳しい窒息状態に陥ることになる。

周到に準備された〝芝居〟

 「今こそ、そのような決定が下されるべき時なのだろう。私は、大統領選に出馬する」

 23年12月8日、プーチン大統領は表情も変えずにそう言い切った。モスクワで行われた、ウクライナ侵攻に従事した軍人らに勲章を授与する式典でのひとこまだった。

 式典が終わった直後に、ロシアが占領するウクライナ東部の武装勢力「ドネツク人民共和国」の軍人が、プーチン氏に「私たちは、ロシアに再統合された、ドンバス地域(ウクライナ東部)のすべての人々の総意として、あなたに大統領選に出馬してほしいのだ」と要請。その言葉に応える形で、プーチン氏は出馬を宣言した。

 軍人らが動き出すや、テレビカメラが素早く回り込み、プーチン氏の発言を撮影していた。ロシア政府は「準備されたものではない」と主張するが、周到に用意された発言であったのは明らかだ。さらにプーチン氏の発言はまわりくどく、〝芝居〟との印象をさらに強めていた。

ロシア軍は31万人が死傷

 ウクライナ侵攻をめぐり、プーチン氏はロシアが前線で優位な立場に立ちつつあると、繰り返し誇示している。ウクライナに対する欧米の支援疲れが鮮明になるなか、ゼレンスキー大統領が厳しい局面に追い込まれているのは間違いない。

 ただ米情報機関はロシアが、31万人超ともいわれる死傷者を出していると分析しており、この数字は約7万人とされるソ連のアフガニスタン侵攻での死傷者の4倍を超える。それでも、ウクライナ侵攻の明確な出口は依然見えておらず、プーチン氏が当初目指していたウクライナ全土の制圧には、程遠い状況にある。


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