2024年12月19日(木)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2013年10月23日

 ちなみに、09年8月に0.42倍にまで下がった有効求人倍率も、リーマンショック以前の08年5月の水準である0.95倍(8月)にまで回復している。また、地域別にみれば、東京(1.36倍)をはじめ17の都県で1倍を超えている(図表4)。そして、2005年以降の賃金と有効求人倍率との関係で推計すると、有効求人倍率がほどなく1倍となれば、月間現金給与額は1.3%ほど上昇することになる。

 今年度下期には、消費税率引き上げ前の駆け込み需要も発生し、堅調な景気が続く可能性が強い。このことは、失業率が下がって均衡失業率にさらに接近し、労働需給がひっ迫して賃金上昇率が高まる時点が近づきつつあることも同時に示している。

企業収益増が賃上げを後押しする

 企業収益面からも賃上げに追い風が吹いている。2000年以降でみると、実質賃金が上がると常用雇用者数が縮小する関係が窺える。しかし、景気回復で、近年の雇用と賃金のトレードオフ的な状態が崩れる可能性が高まっている。もはや、ポイントは雇用と賃金両方が改善するほどの企業収益の拡大がいつ起きるかにある。

 さいわい、ここ数年コストカットで収益を確保してきた企業の経営環境は大きく好転している。経常利益増減率の内訳をみても、今年4-6月期には2年振りに営業利益の増加が収益押し上げに寄与している(図表5)。


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