能登半島地震で同省は、現地の被害状況や被災者のニーズなどを検討、1月14日から陸上自衛隊が中心となって臨時のPFI船舶運用支援部隊を編成、石川・七尾港での活動を開始した。現在、現地では「はくおう」が被災者の入浴や1泊2日の休養施設として利用され、「ナッチャン」は被災市町に派遣されている国および県内外の自治体職員の宿泊と情報等を共有する災害対策拠点として活用されている。
駆けつけた人たちの宿舎として活用
ここで注目すべきは、全国の自治体が災害等で相互に協力し合う「対口支援」という制度に基づき、1隻のPFI船舶が応援に駆けつけてきた自治体職員の宿舎となっていることだ。
被災地では自治体職員の多くも被災し、行政機能の低下が懸念される中、避難所運営や罹災証明書の申請、断水地域での給水対応など業務は山積している。それらを全国各地の自治体が職員を派遣して肩代わりしようという制度で、報道によれば、発災から1週間後には都道府県や市など40の自治体から約360人が派遣されている。
被災地の救援や復旧に向けた優先順位の極めて高い活動であり、断水や宿泊施設が乏しい中で、PFI船舶を応援職員の宿舎にしたのは好判断だ。
しかし、今回の災害では自治体職員のほかにも、救命医療や患者搬送のためにDMAT(災害派遣医療チーム)が全国から参集し、介護職員らも続々と現地入りしている。薬剤師らによる移動薬局車も各地から派遣されるなど支援の輪が広がっている。
そして今後はボランティアの本格的な活動も始まる。災害ボランティアは被災地に負担をかけないため、活動時の水やトイレ、寝る場所は〝自己完結〟が原則とされているものの、厳冬期の防寒対策等を考えれば、全国から駆けつけるさまざまな支援者のためにもPFI船舶をもう少し増やすべきではないだろうか。何より四面環海のわが国では、8割を超す39都道府県が海に面しているのだから。
半島を孤立化しないために
PFI船舶の運用は現在、防衛省だけが実施しており、運用を開始した16年には熊本地震で、そして18年には北海道胆振東部地震に急派し、被災者の食事や入浴施設などとして活用されている。また20年には横浜・本牧ふ頭に停泊し、新型コロナウイルスによる感染が広がるクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」の医療支援や生活支援を担う自衛隊員の宿泊場所としても活用された。
そして今回の能登半島のように、災害時に孤立するリスクは、「半島振興法」の対象地域だけに限っても全国で23カ所(194市町村)あり、静岡の伊豆半島、千葉の房総半島、和歌山の紀伊半島、鹿児島の大隅半島などが挙げられる。七尾港のように港湾に大きな被害がなく、大型船が接岸できれば、臨時の宿泊施設としてだけでなく、陸路に代わる人員や物資の輸送ツールとしても活用できるはずだ。