2024年5月13日(月)

21世紀の安全保障論

2024年2月13日

 能登半島地震を機に、今後は防衛省だけでなく、国民保護を主管する総務省などもPFI船舶の運用に取り組み、緊急時の船舶数を現在の2隻から少なくとも4隻程度にまで増やすことを検討してもらいたい。現在、防衛省が運用する2隻の稼働率は、災害派遣や訓練など年間約10%前後で、費用対効果を問題視する向きもある。だが、それを無駄と考えず、災害など緊急事態の際の保険だと思えば、多くの国民も許容できるのではないか。

何でも〝自衛隊頼み〟から脱却しよう

 今後は隻数を増やし、多くの自治体や関係機関、地域住民らがPFI船舶を使った災害や国民保護等の訓練に参加する機会が増えることによって、船舶の運用や船内での支援活動等についても見直すことが可能だろう。

 なぜなら、前述したように能登半島地震を含め、これまでの運用では、陸上自衛隊が臨時のPFI船舶運用支援部隊を編成し、被災者や自治体職員の受け入れ、宿泊や入浴、食事の提供、衛生面の管理などを支援している。しかしこれらの業務は、災害時に自衛隊が行わなければならないのだろうか、と思うからだ。

 駆けつけるボランティアはもとより地域住民らが担えるのではないだろうか。このほかにも災害時に自衛隊が行っている活動を、救援から復旧という時間の経過とともに、順次、市民らに引き継ぐ仕組みも考える必要がある。

 今回の能登半島地震では当初、政治家や一部の有識者から、自衛隊の出動について、「悪手の逐次投入だ」、「派遣が遅い」といった批判の声が上がった。東日本大震災や熊本地震に比べ派遣人員が少ないといった理由もあったが、狭隘な地理的条件に加え、半島内の道路が壊滅的な被害に遭い、さらに自衛隊が大規模部隊を投入しても、水や食料、燃料等の確保が困難だといったことが次々に指摘され、批判は聞こえてこなくなった。批判自体が浅薄なフェイクニュースの類と言っていいだろう。

「はくおう」における健康相談支援。こうした支援は自衛隊にばかり頼ってはいけない

 しかし、そうした批判の背景には、国民の間に〝何でも自衛隊頼み〟という依存心が強まっている気がしてならない。今後、新たな自然災害や国民保護といった危機に直面して、被災者や避難者だけでなく国民は何をしなければならないのか。

 元日の発生というまさかが現実となった能登半島地震を機に、政府は幅広い利活用が期待できるPFI船舶を拡充させると同時に、災害大国に生きる私たちは、自らの役割について考える機会とすべきと思う。

令和6年能登半島地震の特集はこちら

   
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