2024年11月22日(金)

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2024年2月23日

 しかしアングルトンの懸念はある程度当たっており、その意思を継ぐ形で調査を進めたのが、先述したバグレーで、どうやらCIAの中枢にはKGBのモグラが潜んでいたようである。特にCIAのソ連担当首席分析官であったジョン・ペイズリーには疑惑が付きまとったが、彼は78年に謎の海難事故で死亡している。

 見つかった死体はペイズリーではなかったとバグレーは考えていたようだが、CIAが早々に火葬したため、真相は今でも闇の中である。

英国の二重スパイ
フィルビーの暗躍

「007」のモデルで有名な、英国秘密情報部(MI6)もソ連の浸透を受けている。英国では「ケンブリッジ・ファイブ」と呼ばれる、ケンブリッジ大学出身の5人のエリートが、学生時代に共産主義に共感し、そのままMI6などの政府機関に採用された事例が有名だ。5人の中で最初にスパイに転向したのがキム・フィルビーで、あとの4人はフィルビーが引き込んだとされる。

亡命した外交官であるガイ・バージェスとドナルド・マクリーンとの関与について、記者会見を開いたキム・フィルビー(右)。いずれもケンブリッジ・ファイブのメンバーだ(J.WILDS/GETTYIMAGES)

 フィルビーが学生時代を過ごした30年代は、世界大恐慌による資本主義への幻滅、ファシズムの脅威から、共産主義が魅力的に映った時代である。フィルビーら英国のエリートが共産主義に傾倒していったのはそれほど不思議なことではなかった。

 第二次世界大戦が始まると、フィルビーはMI6に採用され、その能力の高さから部内での信頼は高かった。フィルビーはMI6の活動をしつつ、裏ではソ連のスパイとして活動する二重スパイであったが、戦争中は全く疑われることがなかった。むしろ彼がソ連に送っていた「完璧すぎる」リポートが、むしろ英国の欺瞞作戦ではないかとソ連側の疑念を増幅させたほどである。

 48年にフィルビーはMI6の米国支局長にまで昇進し、将来の長官候補とまで見なされるようになる。

 しかし米国は冒頭の「ヴェノナ」計画によって、英国政府機関内にモグラがいることを掴んだ。これはケンブリッジ・ファイブの一人、ドナルド・マクリーンのことであり、まず米国のCIAからフィルビーに情報が伝えられた。フィルビーは動揺したものの、密かにKGBに連絡し、同じケンブリッジ・ファイブのガイ・バージェスと、マクリーンの2人をソ連に亡命させることになる。

 だが、この亡命劇によって、フィルビーにも疑いの目が向けられることになった。CIAのアングルトンはフィルビーを擁護したものの、決定的だったのは54年にソ連から亡命してきたKGBのアナトリー・ゴリツィンの情報であった。ゴリツィンはCIAにケンブリッジ・ファイブの存在を明かし、それによってフィルビーへの疑惑が決定的となった。翌年3月、追い込まれたフィルビー自身もソ連に亡命することになる。

 その後、英国王室美術顧問のアンソニー・ブラントと第二次世界大戦中に英国の暗号解読に携わっていたジョン・ケアンクロスの名前が発覚することで、ケンブリッジ・ファイブの5人の名前が確定し、MI6に衝撃を与えた。ただし英国でもフィルビーへの評価は複雑だ。小説家のジョン・ル・カレはフィルビーを裏切り者と断罪しているが、かつてフィルビーの部下であった小説家のグレアム・グリーンは、同情的な意見を表明している。

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Wedge 2024年3月号より
ジェンダー平等と多様性で男性優位の社会を変えよう
ジェンダー平等と多様性で男性優位の社会を変えよう

「育児休暇や時短勤務を活用して子育てをするのは『女性』の役目」「残業も厭わず働き、成果を出す『女性』は立派だ」─。働く女性が珍しい存在ではなくなった昨今でも、こうした固定観念を持つ人は多いのではないか。 今や女性の就業者数は3000万人を上回り、男性の就業者数との差は縮小傾向にある。こうした中、経済界を中心に、多くの組織が「女性活躍」や「多様性」の重視を声高に訴え始めている。

内閣府の世論調査(2022年)では、約79%が「男性の方が優遇されている」と回答したほか、民間企業における管理職相当の女性の割合は、課長級で約14%、部長級では8%まで下がる。また、正社員の賃金はピーク時で月額約12万円の開きがある。政界でも、国会議員に占める女性の割合は衆参両院で16%(23年秋時点)と国際的に見ても極めて低い。

女性たちの声に耳を傾けると、その多くから「日常生活や職場でアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)を感じることがある」という声があがり、男性優位な社会での生きづらさを吐露した。 

3月8日は女性の生き方を考える「国際女性デー」を前に、歴史を踏まえた上での日本の現在地を見つめるとともに、多様性・多元性のある社会の実現には何が必要なのかを考えたい。 


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