2024年5月10日(金)

Wedge REPORT

2024年3月14日

基本的に日本はアルコールに寛容な社会

 もともと日本はアルコールには非常に寛容な社会である。神前に酒を供えるなど、多くの宗教祭祀や伝統行事が酒と結びつき、アルハラがそんな昔からあったほどで、人と人とをつなぐコミュニケーションに欠かせない道具とされてきた。戦中・戦後の食料危機のときも、量は少ないが日本酒とビールの配給がちゃんとあったくらいである。

(Kar-Tr/gettyimages)

 1980年代、ついに死亡事故が勃発した大学生の「イッキ飲み」と「キッチン・ドリンカー」と呼ばれる主婦のアルコール中毒が社会問題になったが、ほどほどの適量を守れば百薬の長という国民大半の意識は揺るがなかった。病的な健康ブームが席巻した1990年代以降も、逆に赤ワインが「動脈硬化を防ぐ」「健康にいい」とブームになったくらいだ。2013年に「アルコール健康障害対策基本法」が成立しているが、この法律の存在と内容をよく理解している人はいまも少ないだろう。

 アルコール健康障害は、「アルコール依存症その他の多量の飲酒、未成年者の飲酒、妊婦の飲酒などの不適切な飲酒の影響による心身の健康障害」と定義されている。国は防止対策を定めた基本計画を策定し、国民は「アルコール健康障害の予防に必要な注意を払うよう努めなければならない」と義務づけられた。にもかかわらず、生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者(1日当たりの純アルコール摂取量が男性40グラム、女性20グラム以上の者)の割合は、女性は2010年の7.5%から2019年は9.1%に増加し、男性は約15%の横ばいだ。


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