日本人の体質に合い、塩分や酸分の多い過酷な環境ですくすく育つため生きて腸まで届く力が強く、免疫力アップ効果が高いとうたわれた。続いて、11年の「塩麹」にはじまる伝統的発酵食品の再評価も、腸ブームにつらなる現象だった。
インフルエンザ予防として冬の定番に
同じ頃、「機能性ヨーグルト」の大ブームが起こり、現在も進行中だ。きっかけは、「明治ヨーグルトR-1(現「明治プロビオヨーグルトR−1」)」、雪印メグミルク「恵 Megumi 長くとどまるガセリ菌ヨーグルト」「恵 Megumi 生きて届けるビフィズス菌ヨーグルト」、「森永ビヒダスヨーグルトBB536」など、菌種名や菌株名を打ち出した製品を各社が続々発売したことだった。なかでも、使用される乳酸菌1073KR-1が「免疫力を高めてインフルエンザを予防する」とテレビで報道された12年から、R-1は冬に品薄が続くモンスター商品になった。
10年からトクホ取得のヨーグルトが現れ、15年からは機能性表示食品のヨーグルトも急増。スーパーのヨーグルトコーナーに並ぶカップ入りヨーグルト、飲むヨーグルトの種類には圧倒されるばかりだ。表示する機能性もおなか関連ばかりでなく、「記憶力を維持する」「目と鼻の不快感を緩和する」「血管のしなやかさ維持に役立つ」「尿酸値の上昇を抑える」「歯と歯ぐきの健康が気になる方に」「口内フローラを良好に」「紫外線から肌を守る」「睡眠の質向上」……と百花繚乱だ。
ヨーグルトが不老長寿食としてはじめて話題騒然になったのは、大正時代のはじめ。日本初の瓶入りヨーグルトと乳酸菌飲料「醍醐素」が発売されたのは1917年(大正6年)のことである。醍醐素はカルピスの前身で、キャッチコピーは「千古の強壮料」だった。100年前の日本人がヨーグルトに抱いた夢を、いま私たちも追っているのである。