韓国は日本と同じく、エネルギー源の大半を国外から輸入していることから、国際エネルギー情勢の影響を大きく受けてきた。一方、エネルギー政策で日本と異なる点は、韓国は2011年の東京電力福島第1原発事故以後も、原子力発電を維持してきたことである。韓国はエネルギー安全保障とカーボンニュートラルの手段として、原子力発電所を積極的に活用している。こうした韓国の動向は、日本に資源獲得の競合として、電力事業の他山の石として多くの示唆を与えてくれる。
中東諸国からの原油調達
韓国にとって、中東諸国からの原油調達は国家の優先事項である。韓国貿易協会の統計によれば、23年の原油の最大調達先はサウジアラビア(総輸入量の36%)となり、アラブ首長国連邦(UAE、11%)やクウェート(10%)、イラク(10%)、カタール(6%)も重要な供給国である。
16年からの米国産原油の輸入増加を受け、中東への中東依存度は16~23年の期間に87%から73%に低下したものの、韓国は依然として、中東諸国とのエネルギー関係を重要視している。
特にこの数年、韓国が湾岸諸国を頼る背景には、韓国・イラン関係の悪化がある。米国のオバマ政権が主導したイランとの核問題に関する包括的共同作業計画(JCPOA)が16年1月に履行した後、当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領が同年5月に韓国大統領として初めてイランを訪問し、イラン産原油の追加輸入などを目的に二国間関係の強化に着手した。その結果、韓国のイラン産原油の輸入量は15~17年に3倍以上も増加し、17年時の輸入割合は全体12%を記録した。
しかし、18年にトランプ政権がJCPOAから離脱し、対イラン制裁を発動させた。これを受け、北朝鮮問題を抱える韓国としては米韓同盟を重視し、イラン産原油の輸入を控えざるを得なかった。
こうした事情から、韓国は湾岸諸国から原油の追加調達を試みた。他方、韓国が対イラン制裁に沿って、自国内にあるイラン保有資産(約70億ドル)を凍結したことが原因となり、韓国・イラン関係は深刻化した。