2024年11月22日(金)

World Energy Watch

2024年3月27日

 また、国際エネルギー機関(IEA)が23年3月に発行した韓国の石炭転換戦略に関する報告書によれば、石炭火力関連の労働者は5万人以上にのぼるため、彼らの再雇用先を確保する必要性もあると考えられる。

 ただ、韓国は気候変動対策に加え、脱ロシア政策の観点からも石炭火力への依存度を下げざるを得ないだろう。欧米諸国はウクライナ危機下、ロシアの戦費につながる資源収入を断つため、対ロシア制裁を強化し、ロシア産エネルギー依存の解消に努めている。欧州連合(EU)は22年8月よりロシア産石炭を禁輸している。

 一方、韓国はロシア産石炭の輸入削減に踏み切れずにいる。総輸入におけるロシア産のシェアは、ウクライナ戦争前(21年)の17%から22年に21%、23年には22%に達した。

 フィンランド拠点のシンクタンク「エネルギー・クリーンエアー研究センター(CREA)」が各国・地域別のロシア産化石燃料の調達額を試算したところ、韓国の石炭輸入額はウクライナ侵攻以降(22年2月~24年3月17日)、87億ユーロとなった。また韓国貿易協会の統計からも、韓国のロシア産石炭購入額が原油や天然ガスに比べて、減少していないことが確認できる。

エネルギー移行のカギとなる天然ガス

 石炭火力の段階的削減に着手するものの、新規原子炉の完成には多くの時間を要すため、韓国はエネルギー移行におけるガス火力発電の役割にも注目している。1986年に液化天然ガス(LNG)輸入を開始した韓国は現在、世界最大のLNG購入国の1つとなった。

 脱化石燃料を掲げる脱炭素化の潮流下でも、天然ガスの活用は22年の第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)で、「低排出エネルギー」として事実上容認されている。尹政権は、老朽化した石炭火力発電所からガス火力発電所への転換を進めている。第10次電力需給基本計画では、ガス火力発電の総設備容量が23年の43GWから36年までに64GWに拡大する見通しである。

 LNGの調達先は原油に比べて、多角化している。23年、韓国のLNG輸入量では第1位が豪州(24%)、次いでカタール(19%)、マレーシア(13%)、米国(11%)、オマーン(11%)となった。中東依存度は32%、ロシア依存度は4%である。


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