2024年12月7日(土)

バイデンのアメリカ

2024年4月12日

風向きを変える中絶問題

 中でも、米国女性にとって最大関心事とされる妊娠中絶の女性の権利問題は、トランプ陣営が今後の選挙戦を戦う上で不安材料のひとつだ。去る22年6月、トランプ氏が大統領在任中に任命した3人の判事を含む連邦最高裁で、中絶否認の歴史的判断が下されて以来、女性たちの政治的関心がにわかに高まり、共和党支持率低下にもつながっているからだ。

 とくに18~29歳の若年層の間での不満が沸騰しつつある。

 Gallup社が中絶問題について、昨年実施した若年層を対象とした調査結果によると、「無条件で支持」が48%、「条件付きで支持」41%と、双方合わせ89%にも達したのに対し、「不支持」はわずか11%にとどまった。世代別では60歳以上と高齢になるほどその差が縮まってはいるものの、全体で見た場合でも大半の女性が最高裁判決に異議を唱えていることが明白になっている。

 これを受け、翌23年に各州で実施された多くの地方選挙、住民投票は、いずれも民主党にとって歓迎すべき結果となった。

 16年大統領選挙でトランプ氏が制したオハイオ州での住民投票では、「州憲法による中絶容認」が56%の支持で採択され、バージニア州議会では、中絶問題を前面に押し立てた民主党が上下両院で多数を制し、ペンシルバニア州では、民主党推薦候補が新たに州最高裁判事に選出された。

 今年11月、大統領選の激戦州といわれるネバダ、フロリダ、ペンシルベニア、アリゾナ各州などでも、オハイオ州と同様の住民投票が実施される予定になっており、バイデン陣営もこれらの動きに便乗する形で関係各州での女性票の上積みに躍起となっている。

 中絶問題のほか、レイプ事件の増加、職場での男女間の待遇ギャップ、銃砲所持規制、児童手当の改善などについても女性有権者の関心は高く、いずれの問題でも民主党が有利な立場を維持している。

 ただ、米大統領選は女性票が過半数を占める全米の得票総数だけで決まるわけではない。各州に振り分けられた異なる大統領選挙人数のうち、比較的その人数の多い重点州をどちらの候補がいかに抑えられるかがカギとなる。


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