「何かの情報を発信するということは、それに対する世の中からの批判の声を引き受けることでもあります。近年の地上波メディアはインターネットやSNSの意見を気にし過ぎるあまり、情報発信のあり方が萎縮しているように感じられる。私はそのことを、とても残念に思っているんです」
誰もが自分を肯定できる
社会になってほしい
言葉狩りや誤りを認めない社会の背景には、自己肯定感の欠如があるのではないかと安藤は指摘する。自己肯定感が高ければ人を受容できるが、それが低いと攻撃したり誹謗中傷に走ったりするようになるという。
「自己肯定できると、他者も肯定できる。自己肯定は自分に自信を持つこととはちょっと違う。他者との比較ではなく、ありのままの自分を受容することなんです」
だからこそ、「平成」をニュースキャスターとして見つめてきた安藤は、「令和」は誰もが自分を肯定し、受容できる社会になってほしいと願っている。
「『なりたい自分になれる社会』になってほしいですね。例えば、女性が政治家になろうが、専業主婦になろうが、自分が快適でそうありたいと思った生き方を、風通し良く実現できる社会。どんな属性の人も自己肯定感を持って自分の選択を受容し、他者の選択もまた、受容していけるような社会になってほしい。今はそのような社会を作っていくときにきている、と私は思っています」
安藤がニュースキャスターになった頃、彼女の「現場」には男社会がもたらすさまざまな暗黙のルールや見えない壁があった。それはこの40年間で徐々に取り払われてきたものの、この社会にはそうした「暗黙のルール」に縛られた社会通念が、いまも至る所に残っていることには変わりない。
「そのような社会通念が生み出す『重さ』のようなものは、マイノリティーや弱者の人たちにより多くの負担となってのし掛かっていくものです。平成という時代を経て、その『重さ』を取り払うときが、いま目の前に来ていると思います」(文中敬称略)