他でも北京での雰囲気は厳しくなっている。現地駐在のドイツ・メディアは以前と異なり迎賓館にも人民大会堂にもアクセスが認められず、ショルツと李強の記者会見では、前年の李強のベルリン訪問と同様に質問が許されなかった。中国側によれば李強は前任者と違って脚光を浴びることを好まないということだが、今や何事も習近平次第ということはよく知られている。
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ウクライナ情勢、経済関係、環境・気候変動を重視も
今回の訪中はショルツにとり2回目で、地方訪問、閣僚同行(環境相、農業相、交通相で連立 3党から各1人)、経済人同行を伴う本格的訪問であった。が、報道を見る限り成果は極めて乏しかったと言わざるをえない。
ドイツ政府の説明では、ドイツが重視したのはウクライナ情勢、経済関係、環境・気候変動で、メディアの関心は前二者に集中したが、上掲解説記事にある通り、中国側の対応はほぼ「ゼロ回答」であった。ドイツにとっての最大関心事であるウクライナ情勢についても、特にドイツが今回重視していたとみられるスイスでの国際会議への出席の言質も得られなかった。
経済関係では両国間の貿易・投資の拡大という一般的なメッセージはともかく、公正な競争条件、過剰生産能力のような、より具体的問題についての中国側の態度は硬かったようである。
成果が見込めなかったにもかかわらず、本格的な訪問を実施し、しかも、ショルツがデカップリングを退ける一方で、デリスキングに言及しなかったとされることから、中国の種々の問題行動にもかかわらず、結局のところ、ドイツの主たる関心は中国との経済関係の維持・拡大にあるということが改めて浮き彫りになった。
さらに、中国贔屓とされた前任のメルケルでさえ、首脳会談で人権問題を取り上げたり、人権活動家と会合したりしたが、今回のショルツ訪中では、ドイツ側の発表でも人権問題の記述は皆無であり、また、日程にも人権活動家や NGO との会談は含まれていなかった。