<補論>
一国の経済成長のエンジンを確認するにあたってはカルドアの第1法則を応用することが有効な方法の一つである。元々のカルドアの第1法則は製造業が成長のけん引役であることを確認する意図から、実質GDPの成長率と製造業の実質付加価値額の成長率の関係性を示すもので、式で表すと以下のようになる。
(1)式においてlnGDPは実質GDP成長率、lnManは製造業の実質付加価値額の成長率を表し、tは歴年、γ1は製造業の実質付加価値額が1%成長したときに実質GDPを何%押し上げるかを表す弾性値、Cは定数項である。
ただし、製造業の実質付加価値額は実質GDPを構成する1項目であるため、より正確を期するために以下のように変形されたカルドアの第1法則を利用することが多い。
(2)式におけるlnNManは非製造業が生み出した付加価値額の成長率となり、γ2は製造業と非製造業の成長率の差に対する実質GDP成長率の弾性値である。このγ2が正の値であればその国の経済成長のエンジンは製造業であり、負の値であればそれ以外の産業が成長をけん引していることを意味する。
本稿ではこれをサービス業にも拡張して製造業とサービス業どちらがASEANの成長のエンジンであったかを統計的に確認した。その結果が以下の補論図表である。製造業ではγ2が正の値となった一方、サービス業は負の値となった。このことからASEANの成長のエンジンは製造業であるということが確認された。
※本稿は、筆者の個人的な見解で所属機関としての見解ではありません。