2024年7月27日(土)

Wedge REPORT

2024年5月21日

 また、オーバーツーリズムを「観光客が及ぼす悪影響に対して地域が十分な利益を得られていない状態」と定義すると、別の対応策が見えてくる。対応策として、観光客からの利益を明確な形で地域住民に還元するのである。

 わかりやすい事例は米国のオーランドであろう。オーランドは宿泊費の6%を宿泊税として徴収しているが、それを観光公共インフラに使っているので、この点で地元納税者(住民)の負担が減っている。

 観光から得られるベネフィットをどのように住民に還元するかという観点で考えると、観光客数の増加以上に観光客一人あたりの消費額を高くすることが重要となりそうだ。高くなった消費の一定額を地域住民へと還元できる。

 観光事業者のベネフィットおよび地域への還元が高まれば、それが従業員への待遇向上にもつながり得る。それで担い手が増えてくれば、受け入れキャパシティの増強にもつながる。ハッピーサイクルになるのではないだろうか。

他の地域が学ぶこと

 現在、日本政府は観光客の地方誘客を重視している。地方にバランスよく観光客を誘致するのはきわめて重要である。ただし、それまで多くの観光客を受け入れた経験の少ない地域にいきなり観光客が押し寄せたらたちまちオーバーツーリズムになるリスクが高い。

 オーバーツーリズムを「キャパシティ以上の観光客が押し寄せる」が定義とすれば、地域の観光受け入れキャパシティが仮に1000人で1500人が来れば”オーバー“になる。いったん観光客に対してネガティブになった地域住民感情は、観光客数の制限や平準化といったこれまでの対策だけではポジティブにならない。

 「観光客が及ぼす悪影響に対して地域が十分な利益を得られていない状態」という定義で、いかに地域住民に観光の利益を還元するかというベネフィットデザインが重要になってくるのである。

 京都のDMO(ディスティネーション・マネジメント・オーガニゼーション)は日本でもトップクラスの観光マネジメント組織であり、観光先端地域としてさまざまな対応施策を今後も行ってゆくと思われる。そこから他の地域が学ぶことは多いだろう。

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