国内問題については、台湾の半導体分野における優位性と、社会のあらゆる面に人工知能を取り入れるという政権の目標を強調した。彼はまた、「希望の国家プロジェクト」を通して、住宅から交通の安全まで幅広い問題に取り組むことを約束した。
就任したばかりだが、頼総統は既に議会の分裂や国際的な厳しい監視に直面している。しかし、就任演説を見る限り、台湾は、頼氏の総統府での落ち着いた存在感に期待してよさそうだ。
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頼清徳が語った「台湾」
Taipei Times が、頼清徳総統の就任演説について論評している。頼演説は対中政策について「現状維持」を明言した一方、台湾を守る強い意思を感じさせるものであった。
蔡英文前総統の就任時は、「中台関係」や「中国」を表現する際に、「両岸関係」や「対岸」などの表現を使ったが、頼清徳は「中国」で通した。中台が「一つの中国」原則を確認したと中国が主張する「1992年コンセンサス」には全く言及せず、中国への強い警戒感をにじませた。
頼は文章にして5000字あまりの演説の中で「中華民国」という国家に9回、「中華民国、台湾」という呼び名を3回繰り返した、という。そして「国民は民族に関係なく、だれが先に来たかに関係なく、台湾アイデンティティーをもつ限り、この国家の主人です。それが、『中華民国』であろうと、『中華民国台湾』であろうと、『台湾』であろうと、みな私たち自身と国際社会の友人たちが私たちを呼ぶ名称です」と述べている。
頼清徳はかつて「自分は台湾独立のために仕事をする人間でありたい」と述べたことがある。現在、蔡英文政権の路線を踏襲し、中国を刺激、挑発しないためにも、「現状維持」路線を取る、との立場を公言しているが、今回の就任演説は全体として台湾アイデンティティーの強まりを表明したものとなっている。つまり、「現状維持」を主張しつつ「民主の中華民国、台湾」を守ると言うことである。
他方、頼氏は「われわれは平和の理想を追求するが、幻想を抱くことは出来ない」とする。そして、「中国が台湾への武力侵攻を放棄していない状況」にあっては、「たとえ中国側の主張を全面的に受け入れ、(台湾の)主権を放棄しても、中国が台湾を併合する企ては消失しない」と強調する。