「当時の人たちには今のような情報も選択肢もありません。だから突き進むしかなかった。ただ、現代を生きる僕たちには、筒井さんや僕の父親が生きた昭和の時代と違って、選択肢がたくさんあります。でも逆に選択肢だらけの中で生きているからこそ、その選択で悩んでしまいがちです」
現代では自分で生き方を選んでいかなければいけない。そんな時代にこの物語が伝えてくれるのは、「誰かのために自分には何ができるのか」というメッセージだと大泉さんは言う。
「現代を生きる僕らは何をしたときに満足感を得られるんだろうと考えたら、『誰かに何かをつなげる』ことができたときなんじゃないかと思ったんです。自分のことだけ考えて生きていたら、きっとどこかで虚しさが襲うでしょう。人間である僕たちには、種族を繁栄し、未来につなげていくという究極の目的があります。それは、決して子孫を残すということだけに限りませんが、本能として、何かをつなげるために僕らは生まれたんじゃないかなって。この映画を見た方々が感じることはさまざまあると思いますが、僕は演じていて、そう感じました」
大泉洋さんの原動力
『ディア・ファミリー』で難役を演じきった大泉さん。俳優であり、歌手であり、時には司会業もこなす彼を突き動かしているものは何なのか。
「2月に開催した武道館ライブもそうですが、『ファンの皆さんを喜ばせたい』『どこまでも楽しませたい』という思いから始まっています。歌を歌いたいから歌うというよりは、『今度は何をしたら僕のファンは喜んでくれるかな』って考えて。そういうことしか、僕はできないんです。やっぱり僕の本質も『誰かのために何かをする』ということなのかもしれないですね」
宣政さん同様に、自分ができる精いっぱいの何かを他者にしたいという思いが大泉さんにもあった。 時代を超えても変わらないこの価値観を未来にどうつなげていくか。命を救う技術も進歩し、選択肢が広がった現代だからこそ、改めて考えたい。