2024年7月5日(金)

現場搾取社会を変えよう

2024年7月1日

地域産業を担う人材育成が
工業高校の役割

 水戸工業では例年、生徒の6割が就職する。今年度、176人の就職希望者に対して約3000件もの求人がきている。卒業生の多くは大手製造業で重責を担い、中堅世代になると約1000万円の収入を得るという人材もいる。大学を卒業しても内定を得ることが難しいような企業の求人が、同校に多数寄せられている。地元の大手製造各社の管理職や人材紹介会社の営業担当者は「水工生は仕事ののみ込みが早く、技術力がある。授業で実習を経験しているため働くイメージをつかんでいて離職が少ない」と口を揃え、〝水工ブランド〟の強さを物語る。

 校長の久松政信さんは、「地域産業を担う人材を育てるのが工業高校の役割。そのために専門技術を教え、資格を取得できるように指導している」と話す。水戸工業では28年前から「課題研究」を授業に取り入れている。3年生になると個々にテーマを考え、研究発表して卒業していく。大半の生徒が学科で学んだことを進路に生かす。

水戸工業高校の久松政信校長

 工業化学の実験室では、生徒が顕微鏡を覗き込んで梅についたカビについて記録していた。工業化学科では「菌とリサイクル」をテーマに、菌が物質をどう変化させていくのか、化学反応がどう起こるのかを研究する。水戸の名物でもある梅の木が学校に植えられていて、初夏にたくさんの実をつける。その梅の実も研究の対象となる。

 工業化学科の相川みずきさんは、「美容に関心があるので、クエン酸を含む梅の実は肌に良いのではないかと思い、化粧水を作る予定です」と教えてくれた。中学時代から医療関係に興味があった相川さんは、薬品の勉強ができる水戸工業の工業化学科への入学を決めた。教諭の大槻満さんは「化学の領域は未知なことが多く、生徒たちが将来、何かを解明してくれるのではないか」と期待を膨らます。

水戸工業高校は全校生徒940人のうち女子生徒は132人。相川みずきさんは医療関係に関心があり、大学への進学を目指している

 また、情報技術科では「世の中にあったらいいもの」をテーマに生徒が個々にプログラミングに取り組む。加藤木翔希さんは、人と「じゃんけん」ができるロボットの技術を応用して、指で示した1、2などの数字を認識できるロボットを考案している。例えば高齢者がロボットと指で「1+1=2」の練習ができるようになれば、高齢者の認知機能が向上するのではないか。その結果をロボットが記録できれば、認知機能の変化も分かる。高齢者施設では看護師や介護職が多忙なため、スタッフの負担軽減にもつなげたいという思いからのアイデアだ。加藤木さんは、高校卒業後は高専に編入し、将来はアプリ開発会社で働くという目標を持っている。

プログラミングのコンテストで受賞経験のある加藤木翔希さん。クラスメイトも一目置く存在だ

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