2024年7月5日(金)

現場搾取社会を変えよう

2024年7月1日

トヨタ、JR東日本、関電工
卒業生は大手企業に

 文部科学省によれば、工業科のある高校は全国に517校ある(23年5月現在)。各校、機械や自動車、電気、建築、デザイン、食品、情報処理などの強みに特色がある。社会が大きく変化する中、東京都は23年度から工業高校を工科高校と名称変更。教育の充実や学校の魅力発信を図っている。

 都立六郷工科高校は、都内唯一の単位制の工科高校。20年前に日本で初めてデュアルシステム科が設置され、企業と連携してインターンシップや長期職業訓練を行っている。また、都内でも数少ないオートモビル工学科があり、同校は「第一種自動車整備士養成施設」の認証を受けているため、特定の科目を履修すれば「3級自動車整備士」の試験で実技試験が免除される。

六郷工科高校の旋盤実習。主幹教諭の野澤幸裕さんから指導を受ける井ノ上達也さん。同校は、国内トップクラスの技術を誇る大田区の中小企業に多くの生徒を輩出している

 六郷工科では昨年度の卒業生100人のうち、約半数が就職した。就職先はトヨタ自動車、東日本旅客鉄道、関電工などの大手企業も名を連ねる。昨年度は就職希望者の約50人に対して求人が2500~3000件あり、今年度は3500件以上を見越している。

 デュアルシステム科では280社ある提携企業の中から企業を選び、2、3年生の前期と後期で1カ月ずつ実習を行う。地元・大田区は、モノづくりの街。国内トップクラスの技術を誇る中小企業が多く、そうした企業の存在を知る良い機会となる。同科の半数以上が実習を経て地元の中小企業に就職している。1カ月も社員と共に働くと、仕事の内容だけでなく人間関係など細かな点も見えてくるため、ミスマッチが起こりにくくなる。

 技能検定3級の合格を目指して旋盤実習を行っている2年生に声をかけると、井ノ上達也さんは、「7歳上の姉が六郷工科に通っていたのが楽しそうで、自分も入学を決めました。旋盤の道に進みたい」と意気揚々としている。目標が見つかると、授業前の朝や放課後に自主的に資格試験の練習に励む生徒が少なくない。

 六郷工科には在京外国人生徒対象の入学試験がある。ネパールなど外国籍の生徒も多く入学しており、6年前から在京外国人に向けて日本語の補習を行っている。多様な生徒の中で、技術だけでなく人間性も育っていく。

六郷工科高校の釼持利治校長(MIKI KOBAYASHI)

 校長の釼持利治さんは、「たとえ中学時代に勉強が苦手でも、工科高校に入って変わる生徒が多い。モノづくりの楽しさに触れ、実習を積み重ねる中で自信をつけ、学びに楽しさを感じるのです。真剣に就職を考え、仕事が生きがいになっていく。学力と技能は必ずしもイコールではありません。図面通りに製品を作ることができるよう、意欲的に挑戦できるかどうか。そうしたヒューマンスキルを高校の3年間で育てていきたい」と語る。


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